生体腎移植ドナーの死亡率は、健常者と比べて、有意に増大はしないことが、米国ジョンズ・ホプキンス大学外科Dorry L. Segev氏らが行った全米ドナー対象の追跡調査の結果、報告された。米国では毎年、約6,000人に上る“健康人”からの腎摘出が行われている。しかしその安全性について、これまでのアウトカム調査は1施設対象としたもので対象者数も十分ではなく、疑問符が残されたままである。そこでSegev氏らは、過去15年間の全米腎移植ドナーを対象とする追跡調査を行った。JAMA誌2010年3月10日号より。
手術関連死亡率は、15年間変わらず
調査は、1994年4月1日~2009年3月31日の間に全米から登録された、80,347人の生体腎移植ドナーを追跡し行われた。追跡調査期間は、中央値6.3年(範囲:3.2~9.8年)。対照群として、第3回全米健康栄養調査(NHANES III)の参加者9,364例を抽出し、比較検討された。主要評価項目は、手術関連死亡率と長期生存とした。
試験期間中、ドナー群の90日以内死亡は、25例あった。同群の手術関連死亡率は、10,000ドナー当たり3.1例(95%信頼区間:2.0~4.6)。15年の間に移植手技や適応に関して変化があったにもかかわらず、その値に変動はなかった。
性別でみると、女性よりも男性で手術関連死亡率は高い。10,000ドナー当たりの男性5.1対女性1.7、リスク比(RR)3.0(95%信頼区間:1.3~6.9、P=0.007)だった。人種別にみると、黒人が白人/ヒスパニックよりも高かった(10,000ドナー当たり7.6対2.6/2.0、RR:3.1、95%信頼区間:1.3~7.1、P=0.01)。また、高血圧の有無でみると、有する人の方が高かった(同:36.7対1.3、RR:27.4、5.0~149.5、P<0.001)。
一方、長期リスクは、年齢や併存症とマッチさせた対照群と比べても、有意に高いことは認められなかった。患者全体、あるいは年齢、性別、人種で階層化した場合でも同様だった。