米国で高齢者の腰部脊柱管狭窄症に対し、より複雑な固定術の実施率が、2002~2007年にかけて15倍に激増していることが明らかになった。米国オレゴン健康科学大学家庭医学部門のRichard A. Deyo氏らが、腰部脊柱管狭窄症で手術を受けた3万人超の高齢者について調べた結果、報告された。併せて、複雑な固定術は除圧術に比べ、術後重度合併症リスクが2~3倍に上ることも報告されている。JAMA誌2010年4月7日号発表より。
米国高齢者3万2,000人の術式、術後合併症、コストを分析
同氏らは、2002~2007年の米国高齢者向け公的医療保険「メディケア」の受給者データを、後ろ向きに分析した。そのうち2007年(1~11月)に腰部脊柱管狭窄症で手術を受けた3万2,152人について、術後合併症や病院へ支払った費用について調べた。
手術については、(1)除圧術のみ、(2)単純固定術(椎間板1~2ヵ所、単一手術アプローチ)、(3)複雑固定術(椎間板3ヵ所以上、または複合前方・後方アプローチ)、の3段階に分類した。
分析の結果、複雑固定術の実施率は、2002年の受給者10万人当たり1.3件から、2007年には同19.9件へと、約15倍に大幅増加したことがわかった。
生命に関わる術後合併症リスク、複雑固定術は除圧術の約3倍
術後合併症発症率は、生命に関わるものが、除圧術群が2.3%だったのに対し、複雑固定術群は5.6%だった。年齢や共存症、手術歴などについて補正を行った後、同合併症発症に関する、複雑固定術群の除圧術群に対するオッズ比は、2.95(95%信頼区間:2.50~3.49)だった。
術後30日以内の再入院率についても、除圧術群7.8%に対し、複雑固定術群は13.0%で、補正後オッズ比は1.94(同:1.74~2.17)
だった。
補正後の病院へ支払った費用は平均で、除圧術が2万3,724ドルに対し、複雑固定術は8万888ドルに上っていた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)