スタチンは、血清コレステロールの低減、また特異的(多面的)と思われる保護作用で心血管予防に寄与する。一方でいくつかの試験で、降圧効果も発揮するとの報告があるが、付加的防御機構として公表するには、試験に方法論的な限界があるともされている。そこでイタリア・Milano-Bicocca大学臨床・予防医学部門のGiuseppe Mancia氏ら研究グループは、以前に報告したスタチン併用による頸動脈の内膜-中膜厚の進行抑制を検討した試験PHYLLISから、24時間自由行動下血圧を基にした2次解析を行い、スタチンに付加的な降圧効果が認められるかを検討した。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月25日号)掲載より。
高血圧と脂質異常症を有する508例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験
PHYLLIS(Plaque Hypertension Lipid-Lowering Italian Study)は、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、イタリアの13病院から軽度高血圧と脂質異常症を有する、45~70歳の患者508例が参加し行われた。
被験者は、降圧治療にスタチンを追加し併用投与する群(スタチン併用群)、また追加投与しない群(降圧薬単独群)に無作為化された。降圧療法は、ヒドロクロロチアジド(商品名:ニュートライド)25mgを1日1回、もしくはfosinopril 20mgを1日1回にて、スタチン追加併用投与はプラバスタチン(同:メバロチン)40mgを1日1回で行われた。
被験者の平均治療期間は2.6年。本解析では、その間の年1回の診察室血圧、自由行動下血圧を主要評価項目とした。
スタチン併用にさらなる降圧効果認められず
結果、降圧薬単独群(254例、総コレステロールの低下はわずかだった)、スタチン併用群(253例、総コレステロールとLDLコレステロールは顕著に持続的に減少)の両群とも、診察血圧はクリアカットに持続的に収縮期および拡張期とも降圧が図られていた。24時間血圧、日中・夜間血圧についても同様だった。
降圧はスタチン併用群の方が、やや劣った。しかし期間中の両群間の差は、1.9mmHg(95%信頼区間:-0.6~4.3、P=0.13)を上回ることはなかった。
Mancia氏は「24時間自由行動下血圧を基に解析した結果、スタチン追加併用に、さらなる降圧効果は認められなかった」と結論している。