壊死性膵炎の患者に対し、低侵襲のステップアップアプローチを行うことで、従来の標準治療とされる開腹膵壊死部摘除術よりも、転帰が改善したことが報告された。ユトレヒト大学病院Hjalmar C. van Santvoort氏らオランダ国内7つの大学病院、12の教育病院が参加したオランダ膵炎研究グループによる多施設共同研究による。NEJM誌2010年4月22日号掲載より。
無作為化試験で標準法と比較
ステップアップアプローチとは、経皮的ドレナージを行った後、必要に応じて低侵襲の後腹膜膵壊死部摘除術を行うというもの。
試験は、壊死組織感染の疑い・確認された壊死性膵炎患者88例を無作為に、開腹膵壊死部摘除術を第一に受ける群と、ステップアップアプローチを第一に受ける群に割り付け行われた。
主要エンドポイントは、重大な合併症(多臓器不全・多発性全身性合併症の新規の発症、内臓穿孔・腸管皮膚瘻、出血)と死亡の複合だった。
低侵襲ステップアップアプローチ群のリスク比0.57
主要エンドポイント発生は、開腹膵壊死部摘除術群45例中31例(69%)、ステップアップアプローチ群43例中17例(40%)で、ステップアップアプローチ群の開腹膵壊死部摘除術群に対するリスク比は0.57(95%信頼区間:0.38~0.87、P=0.006)と、転帰が大きく改善することが示された。なお、ステップアップアプローチ群では、35%が経皮的ドレナージのみの施行だった。
多臓器不全の新規発症頻度は、ステップアップアプローチ群は12%で、開腹膵壊死部摘除術群40%と比べてより低かった(P=0.002)。
死亡率については両群で有意差は認められなかった(19%対16%、P=0.70)。
その他、ステップアップアプローチ群の方が、腹壁瘢痕ヘルニアの発生率(7% 対 24%、P=0.03)、糖尿病の新規発症率(16%対38%、P=0.02)が低かった。
(医療ライター:武藤まき)