高用量ビタミンBを投与した糖尿病性腎症患者群は、非投与群に比べ、3年後の尿細管濾過率の低下幅が増大、血管イベントリスクも増加することが明らかになった。カナダ・西オンタリオ大学腎臓病部門のAndrew A. House氏らが、200人超を対象に行った試験の結果報告したもので、JAMA誌2010年4月28日号で発表した。
糖尿病性腎症238人を無作為化、36ヵ月後に放射性核種を用い尿細管濾過率変化を測定
同氏らは、2001年5月~2007年7月にかけて、カナダ国内5ヵ所の大学付属メディカルセンターで、合わせて238人の糖尿病性腎症が認められる1型および2型糖尿病患者について、無作為化プラセボ対照二重盲検試験「DIVINe」(Diabetic Intervention with Vitamins to Improve Nephropathy)を行った。
研究グループは被験者を2群に分け、一方には葉酸(2.5mg/日)、ビタミンB6(25mg/日)、ビタミンB12(1mg/日)を、もう一方の群にはプラセボを投与した。
第1エンドポイントは、試験開始時点と36ヵ月後の放射性核種を用いて測定した尿細管濾過率の変化だった。
濾過率減少幅はビタミンB群で大、血管イベントリスクはビタミンB群が2倍
追跡期間の平均値は31.9(標準偏差:14.4)ヵ月だった。
36ヵ月後の放射性核種による尿細管濾過率の試験開始時点に比べた減少幅は、ビタミンB群では平均16.5(標準偏差:1.7)mL/min/1.73m2で、プラセボ群の平均10.7(標準偏差:1.7)mL/min/1.73m2に比べ有意に大きかった(格差平均:-5.8、95%信頼区間:-10.6~-1.1、p=0.02)。
心筋梗塞、脳卒中、血管再生術、総死亡を合わせた統合イベント発生率は、ビタミンB群がプラセボ群の約2倍だった(ハザード比:2.0、95%信頼区間:1.0~4.0、p=0.04)。36ヵ月後の血漿総ホモシステイン値は、ビタミンB群の方が平均2.2(標準偏差:0.4)μmol/Lで、プラセボ群の平均2.6(標準偏差:0.4)μmol/Lより低かった(格差平均:-4.8、95%信頼区間:-6.1~-3.7、p<0.001)。
なお透析実施率については、両群で有意差はなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)