心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対するスタチン療法で、併用療法を行っても単独療法と比べて、イベント抑制効果は認められないことが、ACCORD試験から報告された。本論は、3月に行われた米国心臓病学会ACCで発表、NEJM誌2010年4月29日号(オンライン版2010年3月14日号)に掲載された。
5,500例を、併用群・単独群に無作為化し4.7年追跡
ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者10,251例が参加する、厳格な降圧管理あるいは脂質管理が及ぼす影響を検討するために行われている試験。本論は、厳格な脂質管理の検討(ACCORD lipid trial:ACCORD Lipid)について報告したもので、5,518例が参加した。試験登録は、2001年1月~2005年10月に行われた。
被験者は、オープンラベル2×2で無作為に、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)+fenofibrateの併用療法群(2,765例)か、シンバスタチン+プラセボの単独療法群(2,753例)に割り付けられ追跡された。
主要転帰は、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管系死亡の複合。平均追跡期間は、4.7年だった。
両群にイベント発生の有意差認められず
被験者平均年齢は62歳、女性が31%、37%が心血管イベントの既往があり、約60%が試験登録以前からスタチンを服用していた。
結果、主要転帰の年間発生率は、併用群2.2%、単独群2.4%で、有意差は認められなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.79~1.08、P=0.32)。また、副次転帰(主要転帰+うっ血性心不全による入院等、主要な心血管イベント、脳卒中など)も両群で有意差は認められなかった。
年間死亡率も、併用群1.5%、単独群1.6%(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.75~1.10、P=0.33)だった。
交互作用の可能性はある
事前規定のサブグループ解析の結果、脂質低下の強化療法は、男性には有益だが、女性にはかえって有害となるかもしれない結果が示された。主要評価項目について、男性は併用群11.2% vs. 単独群13.3%だったが、女性では同9.1% vs.6.6%と逆転していた(交互作用P=0.01)。
また脂質による交互作用の可能性も示され、基線でトリグリセリド値が高く(≧204mg/dL)・HDLコレステロール値が低かった(≦34mg/dL)患者は他のいずれの脂質群とも比べて併用療法が有益であることが示された。
研究グループは、「シンバスタチン単独療法と比較して、シンバスタチン+fenofibrateの組合せによる併用療法が、致死的心血管イベント、非致死的心筋梗塞・脳卒中のイベントを抑制することは認められなかった。この結果は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対し、ルーチンで併用療法を用いることを支持しないものである」と結論している。
(医療ライター:武藤まき)