カナダでは1994年以降、冠動脈性心疾患による死亡率が低下傾向にあるが、その要因として、内科・外科治療の進歩と、総コレステロール値の低下などリスク因子の減少にあることが明らかになったという。カナダSunnybrook Health Sciences CentreのHarindra C. Wijeysundera氏らが、地域住民を対象に行った前向きコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表した。
1994~2005年、冠動脈性心疾患死は35%減少
同研究グループは、1994~2005年にかけて、オンタリオ州に住む25~84歳を対象に、試験を行った。急性心筋梗塞や急性冠症候群といった8つの冠動脈性心疾患に対する、エビデンスで裏づけられた治療法と、喫煙や糖尿病といった6つのリスク因子について、それぞれ、冠動脈性心疾患死との関連を分析した。
その結果、調査期間中のオンタリオ州の年齢補正後冠動脈性心疾患死亡率は、人口10万人中191人から125人へと、35%減少していた。2005年には、7,585人の冠動脈性心疾患による死亡が削減できたと推定された。
死亡率低下要因の43%が治療の進歩、48%がリスク因子の減少
同死亡率低下の要因としては、その43%が内科・外科治療の進歩と考えられ、なかでも急性心筋梗塞(8%)、慢性安定冠動脈疾患(17%)、心不全(10%)に対する治療進歩が大きく関与していた。
リスク因子の減少傾向も、3,660人の冠動脈性心疾患死を予防または遅らせることができたと推定され、同死亡率低下の要因の48%に関与していた。なかでも、総コレステロール値の低下(23%)、収縮期血圧の低下(20%)の影響が大きかった。
一方で、糖尿病罹患率や肥満指数(BMI)の増加は、冠動脈性心疾患死亡率増加の、それぞれ6%と2%に関与していた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)