メタ解析の結果、フィブラート系高脂血症薬には、主として冠動脈イベントの予防により主要な心血管イベントリスクを低下すること、心血管イベントのハイリスク患者、脂質異常症を合併する患者で有用である可能性が明らかになった。オーストラリア・シドニー大学・The George Institute for International HealthのMin Jun氏らの報告で、Lancet誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月11日号)に掲載された。心血管リスクのフィブラート系高脂血症薬の有効性に関する知見は一貫していないことから、Jun氏らは、主要な臨床アウトカムの有効性について検討することを目的にシステマティックレビュー、メタ解析を行った。
18のプラセボ無作為化試験4万5,000例分のデータを解析
研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Libraryで1950年~2010年3月の間に発表された試験論文をシステマティックレビューした。適格としたのは、前向き無作為化試験で、心血管アウトカムについてフィブラート系高脂血症薬とプラセボを比較検討した試験とした。
ランダム効果モデルを使って相対リスク(RR)低下を算出し、主要な心血管イベント、冠動脈イベント、脳卒中、心不全、冠動脈再建、全死因死亡率、心血管死亡、非血管死亡、突然死、蛋白尿新規発症、薬物関連有害事象について解析した。
対象となったのは18試験だった。被験者は計4万5,058例、主要な心血管イベント2,870例、冠動脈イベント4,552例、死亡3,880例を含んだ。
冠動脈イベント13%低下、脳卒中はベネフィット認められず
フィブラート系高脂血症薬治療は、主要な心血管イベントを10%低下(95%信頼区間:0~18、p=0.048)した。ただし冠動脈イベントが13%低下(同:7~19、p<0.0001)する一方、脳卒中(-3%、-16~9、p=0.69)はベネフィットが認められなかった。
また、全死因死亡(0%、-8~7、p=0.92)、心血管死亡(3%、-7~12、p=0.59)、突然死(11%、-6~26、p=0.19)、非血管死亡(-10%、-21~0.5、p=0.063)は、効果が認められなかった。
蛋白尿新規発症は14%低下(2~25、p=0.028)が認められた。重大な薬物関連有害事象については、血清クレアチニン値の増加がみられたが(RR:1.99、1.46~2.70、p<0.0001)、有意な増大は認められなかった(225件/1万7,413、RR:1.21、95%信頼区間:0.91~1.61、p=0.19)。
(朝田哲明:医療ライター)