急性肺損傷および急性呼吸不全症候群(ARDS)治療として高頻度振動換気法が従来の機械的人工換気法に代わって行われるようになってきているが、高頻度振動換気法が従来法に比べ死亡率を低下させるとのエビデンスは明らかになっていない。大規模試験は進行中だが試験完了にはまだ時間を要することから、カナダ・トロント大学のSachin Sud氏らは、過去に行われた8つの無作為化試験を対象とするメタ解析を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月18日号)掲載より。
臨床転帰、生理学的転帰、安全性を比較検討
Sud氏らは、急性肺損傷と急性呼吸不全症候群(ARDS)の治療について高頻度振動換気法と従来法との臨床的かつ生理学的効果を比較検討する、システマティック・レビューおよびメタ解析を行った。電子データソースを用い、2010年3月までの論文を検索し選定した。
試験選択基準は、急性肺損傷あるいはARDSを有する成人または小児を対象に、高頻度振動換気法と従来の機械的人工換気法との比較が検討されていた無作為化試験とした。
3人の研究者がそれぞれ個別に、あらかじめ定義されたプロトコルに従い、臨床転帰、生理学的転帰、安全性についてデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いて解析を行った。また、選定した全試験研究者から、明確な試験方法を聞き取り、追加データを入手した。
死亡率、治療の失敗、有害事象から高頻度振動換気法が優位と分析
選定されたのは、8つの無作為化試験(n=419)。そのほとんど(86%)がARDS患者だった。方法論に質的問題はなかった。
24時間、48時間、72時間時点での吸入酸素濃度に対する酸素分圧比(PaO2/FiO2)は、高頻度振動換気法を受けている患者の方が16~24%高かった。また同群の方が、平均気道内圧が22~33%まで上昇したが、酸素化指標に有意差は認められなかった(P≦0.01)。
高頻度振動換気法群に無作為に割り付けられた患者では、死亡率が有意に低下し(リスク比:0.77、95%信頼区間:0.61~0.98、P=0.03、6試験、365例、死亡160例)、治療の失敗(難治性の低酸素血症、高炭酸血症、緊張低下、気圧性外傷)が治療中断によるものとの関連は低かった(同:0.67、0.46~0.99、P=0.04、5試験、337例、有害事象73例)。その他リスクは両群で同等だった。
また、試験間の生理学的転帰にはかなりの不均一性が認められた(I2=21~95%)が、臨床転帰には認められなかった(I2=0%)。また臨床転帰の大半はイベントに基づくものではなかった。
これらの結果から研究グループは、高頻度振動換気法は生存率を改善する可能性があり、かつ害悪ももたらさなさそうだと結論づけた。進行中の大規模多施設試験完了にはまだ数年を要する中、本解析データは現時点でARDS患者に対し同術式を用いている、あるいは適用を考えている臨床家に役立つものとなるとまとめている。