世界では毎年、約20万人の乳児が母乳を通してヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に感染し、その半数は治療を受けられずに2歳の誕生日を迎えることなく死亡している。米国ノースカロライナ大学のCharles S. Chasela氏らの研究グループはマラウイで、HIV-1の出産後伝播を抑えるため、授乳期間中の28週に行う母親への3剤抗レトロウイルス・レジメンと、乳児に行うネビラピン(商品名:ビラミューン)予防投与による伝播抑制の有効性について評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号より。
母親への介入群、子どもへの介入群と、対照群とを比較
研究グループは、HIV-1陽性で、CD4+リンパ球数250個/mm3以上の授乳中の母親2,369例とその子どもを、抗レトロウイルス・レジメン群(母親)、ネビラピン群(乳児)、出産後抗レトロウイルス・レジメンを延長しない群(対照群)の3群にランダムに割り付けた。すべての母親と乳児には周産期予防処置として、ネビラピン投与1回と、ジドブジン+ラミブジンの併用投与を1週間行った。
評価は、カプラン・マイヤー法を用いて、生後2週でHIV-1陰性だった乳児の28週におけるHIV-1伝播または死亡の累積リスクを推定し、log-rank検定を用いて比較した。
HIV-1伝播、早期死亡の危険率が有意に低下
試験対象となった2,369例の母子のうち、生後2週で乳児がHIV-1陽性だった割合は5.0%だった。
生後2~28週におけるHIV-1伝播の推定リスクは、対照群が5.7%と他の2群より高く、母親投与群は2.9%(P=0.009)、乳児投与群は1.7%(P<0.001)だった。
2~28週の児のHIV-1感染・死亡の推定リスクは、対照群7.0%だったのに対し、母親投与群4.1%(P=0.02)、乳児投与群2.6%(P<0.001)と有意に低かった。
好中球減少症を有した母親の比率は、母親投与群(6.2%)が、乳児投与群(2.6%)や対照群(2.3%)より高かった。また乳児投与群では1.9%に過敏反応がみられた。
以上を踏まえて研究グループは、28週の授乳期間中の母親への抗レトロウイルス・レジメン並びに乳児へのネビラピン投与は、HIV-1伝播を抑制するのに有効だと報告している。
(医療ライター:朝田哲明)