自閉症児に対する親によるコミュニケーション介入は症状を改善するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/07/01

 



コアな自閉症の患児に対して、通常の治療に加え親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入を行っても、症状の改善はわずかしか得られないことが、イギリス・マンチェスター大学精神科のJonathan Green氏らが行った無作為化試験で示された。自閉症は、その中核をなす患者のおよそ0.4%、広範な自閉症スペクトラムに属する患者の約1%が重篤で高度に遺伝性の神経発達障害をきたすと推察され、社会的な相互関係や意思疎通、行動の障害が、小児から成人への発達に多大な影響を及ぼすため、家族や社会に大きな経済的な負担が生じることになる。小規模な試験では、社会的コミュニケーションへの早期介入が自閉症児の治療に有効なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載の報告。

PACTによる介入群と非介入群を比較する無作為化試験




研究グループは、中核的な自閉症の患児を対象に社会的コミュニケーションへの早期介入の有効性について検討する大規模な無作為化試験を実施した。

イギリスの三つの専門施設(ロンドン、マンチェスター、ニューカッスル)に2歳~4歳11ヵ月の自閉症児が登録され、親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入(Preschool Autism Communication Trial;PACT)を行う群あるいは通常の治療を行う群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。PACT群の患児には通常の治療も施行された。

主要評価項目は、治療13ヵ月後の自閉症症状の重症度[Autism Diagnostic Observation Schedule-Generic(ADOS-G)の社会的コミュニケーションに関するアルゴリズム項目の総スコア(スコアが高いほど重症度が高度)]とし、補足的な副次評価項目として親子間の相互応答、患児の言語能、学校での適応能を測定した。

親子間のコミュニケーションには明確なベネフィットが




152例が登録され、PACT群に77例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:25例)、通常治療群には75例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:23例)が割り付けられた。

13ヵ月の時点における症状の重症度の改善効果は、施設、性別、社会経済的状況、年齢、言語能、非言語能で補正後のADOS-Gスコアが、PACT群で3.9点低下し、通常治療群では2.9点低下しており、両群とも症状の改善効果が認められた。各群間の効果量(effect size)は-0.24(95%信頼区間:-0.59~0.11)であり、PACTによる介入の症状改善効果は小さいと推察された。

親の子どもへの同期的応答(効果量:1.22、95%信頼区間:0.85~1.59)、子どもからの親への応答(同:0.41、同:0.08~0.74)、親子の配慮の共有(同:0.33、同:-0.02~0.68)にはPACTによる改善効果が認められた。言語能や学校での適応能に対するPACTによる改善効果は小さかった。

これらの知見に基づき、著者は「自閉症児の症状の低減を目的に、通常治療にPACTを併用するアプローチは推奨されない。その一方で、親子間の社会的コミュニケーションには明確なベネフィットが認められた」と結論している。

(菅野守:医学ライター)