オランダで行われている全乳児への7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-7)の4回投与の予防接種プログラムについて、費用対効果に関する研究が行われた。オランダ・フローニンゲン大学薬学部のMark H Rozenbaum氏らによるもので、PCV-7の投与回数を減らした場合や、10価(PCV-10)、13価(PCV-13)のワクチンを用いた場合との比較を行った結果、現行のPCV-7の4回投与は、費用効果的ではないことが明らかになったと報告している。BMJ誌2010年6月19日号(オンライン版2010年6月2日号)掲載より。
PCV-7、PCV-10、PCV-13投与と非投与とを比較
Rozenbaum氏らは、デシジョンツリー分析モデル(予備研究データにより構築)を用いて、PCV-7、PCV-10、PCV-13の費用対効果をワクチン非投与との比較で検討した。
コホート母集団の被験児は、オランダ生まれの乳児18万人で5歳まで追跡された。PCV-7の4回投与が始まる前の肺炎球菌感染症の発病率と抗原型に関するサーベイランスデータは、2004~2006年分が入手できた。
主要評価項目は、コスト、獲得生存年およびQALYs(生活の質を調整した生存年)、増分費用効果比(incremental cost effectiveness)とした。
ワクチンの効果が5年に及ぶと仮定した条件下で解析した結果、5歳児集団におけるワクチン接種による副次効果(集団感染の抑制)は、推定ネットで認められなかった。PCV-7の4回(3+1)投与で予防できたのは、5歳児で、侵襲性症例は推定71例、非侵襲性症例は同5,778例で、173獲得生存年、277QALYsに相当するものだった。
PCV-7の4回投与はコストの割には効果に乏しい
PCV-7の増分費用効果比、すなわち1QALYを獲得するのにかかったコストは11万3,891ユーロで、当初、費用対効果があるものとして推計されていた1QALY当たり5万ユーロをかなり上回っていた。
PCV-7の3回(2+1)投与の場合は、8万2,975ユーロに減っていた。
また、PCV-10、PCV-13接種の場合は、仮定条件により異なるが、3万1,250~5万2,947ユーロの範囲だった。
Rozenbaum氏は、「現行のPCV-7の4回投与は、費用効果的ではない。ワクチン非接種者による感染者増加が、ワクチン接種者による集団への副次効果を減じ、ワクチン接種の予防ベネフィットを相殺しているためと思われる。その点、PCV-10、PCV-13接種の方が利点がありそうである。PCV-7についてはワクチンの接種回数を減らすこと、および値段の引き下げでプログラム全体のコストが減らすことができれば、増分費用効果比を寛容できる範囲に減らすことは可能である」と結論している。