2007年4月にユニセフが公表した、OECD加盟の経済先進国の子どもや若者を取り巻く状況に関する研究報告書(Report Card 7)で、イギリスの子どもは最も評価が低く、次いでアメリカが低位であることが報告された(日本は一部のデータが不足していたため総合評価には含まれていない)。
子どものウェルビーイング(児童福祉)の状況は、その国の社会経済学的状態と密接に関連しているといわれていることから、ヨーク大学(イギリス)のKate E Pickett氏らのグループは、児童福祉格差の状況を明らかにするため、3つのマクロ経済的尺度との関連について調査を行った。BMJ誌オンライン版11月16日付け、本誌11月24日号より。
OECD 23ヵ国間とアメリカ国内間の児童福祉を縦断評価
3つの尺度とは、「物質的な生活水準(平均収入)」「社会的地位の格差(収入格差)」「社会的疎外(相対的貧困家庭で生活する小児の割合を評価)」。
これらについて、ユニセフに報告されたOECD 23ヵ国間の横断比較を行い、国際的な関連性を確認するためアメリカ国内の州間の解析も行った。
主要評価項目は、児童福祉に関するユニセフ報告の指標。アメリカ国内については8つの指標(10代の出産、青少年の殺人、乳児死亡率、低体重出生、教育パフォーマンス、高校の中退、肥満、精神保健上の問題)を用いた。
児童福祉は平均収入より収入格差、相対的貧困と負の相関
その結果、児童福祉指標は総合的に「収入格差(r=-0.64、P=0.001)」と「相対的貧困(r=-0.67、P=0.001)」との間で負の相関が認められ、「平均収入」との相関は認められなかった(r=0.15、P=0.50)。各指標を見ても大半が、「平均収入」より「収入格差」あるいは「相対的貧困」と関連していた。
アメリカ国内では、ワシントンDCと他の各州とですべての指標の格差が有意に大きかった。10代の出産率と高校中退率については、豊かな州ほどより低い傾向がみられた。
これらからPickett氏らは、「先進国の児童福祉の改善には、国家のさらなる経済成長よりも国内の経済格差の是正に努めたほうがよい」と結論づけた。