急性静脈瘤出血で入院した治療失敗の可能性が高いChild-Pugh分類C(重度)、B(中等度)の肝硬変患者に対し、経頸静脈性肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を早期に行うことで、治療の失敗または死亡率を有意に低下することが明らかになった。スペイン・バルセロナ大学病院のJuan Carlos Garcia-Pagan氏ら研究グループによる報告で、NEJM誌2010年6月24日号に掲載された。
early-TIPS群と薬物療法-EBL群に無作為化し追跡
研究グループは、急性静脈瘤出血の肝硬変患者で血管作用薬+内視鏡治療を受けた63例を、入院後24時間以内に2群に無作為化した。
一方は、ポリテトラフルオロエチレン被膜ステントを用いた処置を、無作為化後72時間以内に行う群(early-TIPS群、32例)、もう一方は、血管作用薬を投与しながら3~5日後にプロプラノロール(商品名:インデラル)またはナドロール(同:ナディック)投与と、長期内視鏡的結紮術(EBL)を施行し、レスキュー療法が必要な時にTIPSを行う群(薬物療法-EBL群、31例)に割り付け追跡された。
主要エンドポイントは、割り付け1年以内の急性出血コントロール失敗または臨床的に有意な静脈瘤の再出血予防の失敗からなる複合アウトカムとした。
治療失敗の未発生、薬物療法-EBL群50%に対しearly-TIPS群97%
追跡期間中央値16ヵ月の間に、再出血または出血コントロールの失敗は、薬物療法-EBL群では14例起きていたが、early-TIPS群は1例だった(P=0.001)。
1年間主要エンドポイントが起きない確率は、薬物療法-EBL群は50%だったが、early-TIPS群は97%だった(P<0.001)。
死亡例は両群合わせて16例だった。内訳は、薬物療法-EBL群12例、early-TIPS群は4例だった(P=0.01)。
1年間の生存率は、薬物療法-EBL群61%に対し、early-TIPS群は86%だった(P<0.001)。
薬物療法-EBL群でレスキュー療法としてTIPSを受けた患者が7例いた。しかしそのうち4例は死亡に至った。
追跡期間中のICU滞在日数(8.6±9日対3.6±4日、P=0.01)および入院割合(中央値15%対4%、P=0.014)は、薬物療法-EBL群の方がearly-TIPS群と比べて有意に高かった。
重篤な有害事象に関する発生率は二つの治療間で有意な違いはみられなかった。
(医療ライター:朝田哲明)