劣悪な口腔衛生状態は心血管疾患のリスクを増大させ、軽度炎症のマーカーとも関連することが、イギリスUniversity College London疫学・公衆衛生学科のCesar de Oliveira氏らによるScottish Health Surveyの結果から明らかとなった。過去20年以上にわたり歯科疾患と心血管疾患の関連に対する関心が高まっている。炎症は動脈硬化の病因として重要であり、軽度炎症のマーカーが、高い心血管疾患リスクと関連することが示されており、口腔衛生が劣悪な状態は慢性的な炎症状態である歯周病を起こしやすいという。BMJ誌2010年6月26日号(オンライン版2010年5月27日号)掲載の報告。
歯磨きの回数と心血管イベントのリスクの関連を評価
研究グループは、自己申告による歯磨きの状況と心血管疾患との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白:CRP)、凝固(フィブリノゲン)との関連について検討した。
スコットランドに居住する一般家庭を対象としたScottish Health Surveyに登録された平均年齢50歳の1万1,869人について解析を行った。
口腔衛生状態は自己申告による歯磨きの回数で評価した。調査は病院の臨床記録とプロスペクティブに連動させ、Cox比例ハザードモデルを用いて口腔衛生状態に応じた心血管疾患イベントや死亡のリスクを推定した。口腔衛生と炎症、凝固との関連は4,830人において評価した。
口腔衛生が劣悪だと心血管疾患イベントのリスクが1.7倍に
フォローアップ期間平均8.1年において心血管疾患イベントは555件発生し、そのうち170件が致死的であった。心血管疾患イベントを来した患者の74%(411例)が冠動脈心疾患と診断されていた。
完全に補正されたモデルでは、口腔衛生が劣悪な集団(歯を磨かない、または磨くことはまれ)では心血管疾患イベントのリスクが有意に増大していた(ハザード比:1.7、95%信頼区間:1.3~2.3、p<0.001)。これらの集団では、CRPやフィブリノゲンの濃度も上昇していた。
著者は、「劣悪な口腔衛生状態は心血管疾患のリスクを増大させ、軽度炎症のマーカーとも関連することが示された。しかし、その因果関係は明らかではない」と結論している。
(菅野守:医学ライター)