頸動脈アテローム硬化症は、虚血性脳卒中の重大原因である。治療は頸動脈ステント術と頸動脈内膜切除術の二つがあるが、症候性患者を対象とした、両手技を比較するこれまでの無作為化試験の結果は、相反し議論が続いている。米国メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らは、症候性あるいは無症候性の頭蓋外頸動脈狭窄患者を対象に、両手技を比較検討する試験「CREST」を行った。脳卒中・心筋梗塞・死亡の複合をエンドポイントとした結果、両群で有意差は認められなかったという。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年5月26日号)掲載より。
2,500例超を中央値2.5年追跡
CREST試験は、アメリカ108施設、カナダ9施設から症候性あるいは無症候性頸動脈狭窄患者が登録して行われた無作為化試験で、2000年12月から2008年7月までに2,522例が登録された。
被験者は、頸動脈ステント術を受ける群、または頸動脈内膜切除術を受ける群に無作為化され、主要エンドポイントは、周術期の脳卒中・心筋梗塞・全死因死亡と、無作為化後4年以内の同側性脳卒中の複合だった。
中央値2.5年追跡の2,502例の、4年推定主要エンドポイント発生率は、ステント群7.2%、内膜切除群6.8%で、両群に有意差は認められなかった(ハザード比:1.11、95%信頼区間:0.81~1.51、P=0.51)。
主要エンドポイントに関する治療効果は、症候性であること(P=0.84)や、性差(P=0.34)による違いは認められなかった。
周術期において、ステント群は脳卒中が、内膜切除群は心筋梗塞がハイリスク
4年推定脳卒中・死亡の発生率は、ステント群6.4%、内膜切除群4.7%だった(ハザード比:1.50、P=0.03)。症候性有無別にみると、症候性グループではステント群8.0%、内膜切除群6.4%でハザード比1.37(P=0.14)、無症候性グループではステント群4.5%、内膜切除群2.7%でハザード比は1.86(P=0.07)だった。
周術期の各エンドポイント発生率は、ステント群と内膜切除群とで違いが認められ、死亡は0.7%対0.3%(P=0.18)、脳卒中はステント群で有意に高く(4.1%対2.3%、P=0.01)、心筋梗塞は内膜切除群で有意に高かった(1.1%対2.3%、P=0.03)。
周術期以後の同側性脳卒中の発生率は、ステント群2.0%、内膜切除群2.4%でいずれも低かった(P=0.85)。
(医療ライター:武藤まき)