術後高齢患者への制酸薬服用と肺炎リスク増大には、関連が認められないことが報告された。カナダ・トロント大学のDonald A Redelmeier氏らが行った住民ベースの後ろ向きコホート解析による。BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月21日号)に掲載された。これまでICU患者を対象とした二つの大規模試験で、制酸薬服用患者の肺炎発症率は2~3倍増大すると報告される一方、市中肺炎発症に関する調査では相反する結果が得られていた。制酸薬は世界中で最もポピュラーに処方されており、また処方なしで買い求められることもあり、刊行されているガイドラインでは、リスクについての大規模な調査が必要であると提言していた。
手術入院歴の65歳超約59.3万人を分析、21%が制酸薬を服用
研究グループは、制酸薬服用と術後肺炎リスク増大との関連を調べるため、1992年4月1日~2008年3月31日の間、カナダの急性期病院に待機的手術のため入院した65歳超の患者59万3,265例を対象とした。主要評価項目は、術後肺炎の記録だった。
被験者のうち、制酸薬を服用していた人(ケース群)は約21%で、主としてオメプラゾール(商品名:オメプラールなど)やラニチジン(同:ザンタックなど)を服用していた。
服薬群の非服薬群に対する補正後発症リスクは1.02倍
術後肺炎を呈した人は全体で6,389例いた。発症頻度は、ケース群(13/1,000例)の方がコントロール群(制酸薬非服用群、10/1,000例)と比べて高かった。ケース群の頻度増大は30%増だった(オッズ比:1.30、95%信頼区間:1.23~1.38、P<0.001)。
しかし、手術期間、手術部位など交絡因子で補正後、リスクの増大は認められなかった(同:1.02、0.96~1.09、P=0.48)。
制酸薬の一般的な安全性は、プロトンポンプ阻害薬を処方され、服用が長期にわたり、高用量で、ハイリスクの処置を受けたという患者でも該当した。