小児早期のがん発病と、母親が妊娠中に携帯電話基地局からの高周波電磁波に曝露されていたこととは関連が認められないことが報告された。イギリスのロンドン大学公衆衛生校のPaul Elliott氏らが行ったケースコントロール試験の結果によるもので、BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月22日号)に掲載された。
がん・出産レジストリを用いケースコントロール試験
試験は、イギリスのがんレジストリ、出産レジストリのデータを用いて行われた。がんレジストリからは、1999~2001年の間の0~4歳児1,397例を同定しケース群とした。そのケース群1例につき4例ずつ性・生年月日を適合させたコントロール群を、出産レジストリから5,588例抽出した。
主要評価項目は、脳腫瘍・中枢神経系がん、白血病・非ホジキンリンパ腫、および全がんの発病率とした。分析では、教育レベル、生活レベル、人口密度、住民構成で補正が行われた。
基地局からの距離、出力電力、電力密度の違いとがん発病の関連認められず
1996~2001年のイギリス国内の携帯電話基地局は76,890局。その設置データに基づき、基地局から出生時に登録された住所地までの平均距離を算出した結果、ケース群とコントロール群は同程度だった。ケース群1,107(SD:1,131)m、コントロール群は1,073(SD:1,130)mだった(P=0.31)。
また、住所地からの距離が700m以内の基地局のトータル出力電力は、それぞれ2.89(SD:5.9)kW、3.00(SD:6.0)kW(P=0.54)、電力密度(面積当たり電力)は、-30.3(SD:21.7)dBm、-29.7(SD:21.5)dBmで(P=0.41)、これらについても両群で同程度だった。
分析では、距離、出力電力、電力密度についてそれぞれ3群に階層化し主要評価項目に関するリスクについての検討もされた。
そのうち電力密度について(低曝露群:-70~−26.4659 dBm、中等度曝露群:−26.4658~−17.6966 dBm、高曝露群:≧−17.6965 dBm)、低曝露群と比較して、中等度曝露群の全がん発病リスクのオッズ比(補正後)は1.01、高曝露群の同オッズ比は1.02だった(傾向P=0.79)。脳腫瘍・中枢神経系がんのオッズ比は中等度曝露群0.97、高曝露群0.76だった(傾向P=0.33)。白血病・非ホジキンリンパ腫のオッズ比は中等度曝露群1.16、高曝露群1.03だった(傾向P=0.51)。