早期乳がんの放射線治療、温存術中のターゲット単回照射が有用:TARGIT-A試験

提供元:ケアネット

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公開日:2010/07/22

 



早期乳がんの中には、術後数週にわたる外部照射よりも、術中に腫瘍床を標的とする単回照射法が有効な患者が存在することが、イギリスUniversity College London外科研究部門のJayant S Vaidya氏らが実施した無作為化試験(TARGIT-A試験)で明らかとなった。乳がんは乳房のどこにでも発現しうる多中心的ながんであるが、乳房温存術施行後の局所再発の90%は指標とされる四分区内に起こる。それゆえ、術中の腫瘍床に限定した放射線照射が妥当な患者が存在する可能性があるという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月5日号)掲載の報告。

従来の術後外部照射と術中ターゲット照射を比較する前向きの非劣性試験




TARGIT-A試験の研究グループは、Intrabeam法を用いた新技術である術中ターゲット放射線の単回照射治療と、従来の全乳房に対する外部照射法の有用性を比較するプロスペクティブな無作為化非劣性試験を実施した。

登録は2000年3月に開始され、9ヵ国28施設が参加した。対象は、乳房温存術を施行された45歳以上の浸潤性乳管がんの女性であった。これらの患者が、術中ターゲット照射群あるいは全乳房外照射群に無作為に割り付けられた。

治療割り付け情報は患者にも担当医にも知らされなかった。術後に所定の因子(小葉がんなど)が発見された場合は、術中ターゲット照射に加え外部照射を併用することとした(15%がこれに相当すると予測した)。

主要評価項目は、温存乳房における局所再発率とした。主要評価項目の絶対差2.5%を所定の非劣性限界値とした。

局所再発率の絶対差は0.25%、grade 3の放射線毒性は術中照射群が少ない




術中ターゲット照射群には1,113例が割り付けられ、評価が可能であった996例のうち術中ターゲット照射のみを施行された患者は854例(86%)、外部照射を追加されたのは142例(14%)であった。外部照射群には1,119例が割り付けられ1,025例が評価可能であった。

術後4年の時点で、術中ターゲット照射群の6例、外部照射群の5例が局所再発をきたした。4年時点におけるKaplan-Meier法による温存乳房の局所再発率は、術中ターゲット照射群が1.20%(95%信頼区間:0.53~2.71%)、外部照射群は0.95%(同:0.39~2.31%)であった。両群間の差は0.25%(同:-1.04~1.54)であり、有意差は認めず同等であった(p=0.41)。

重篤な毒性の頻度は術中ターゲット照射群が3.3%(37/1,113例)、外部照射群は3.9%(44/1,119例)と両群で同等であり(p=0.44)、合併症の頻度にも差は認めなかった。grade 3(Radiation Therapy Oncology Group)の放射線毒性の頻度は術中ターゲット照射群が0.5%(6/1,113例)と、外部照射群の2.1%(23/1,119例)に比べて有意に低かった(p=0.002)。

著者は、「早期乳がんの中には、術後の数週にわたる外部照射に代わり術中ターゲット照射法を用いた手術時の単回放射線照射が有効な患者がいることを考慮すべきである」と結論している。

(菅野守:医学ライター)