経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]の投与は、従来のPEG施行前のセフロキシム(商品名:オラセフ)の予防投与と同等の予防効果を有することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所分子外科学のJohn Blomberg氏らによる無作為化試験で示された。PEGの合併症である創傷感染の予防法として、通常、PEG開始直前に第2世代セファロスポリンの静脈内投与が行われるが、高価で時間がかかり、PEGが完遂できない患者に無駄に投与している場合もあるという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年7月2日号)掲載の報告。
新たな予防戦略と従来の予防投与を比較する二重盲検無作為化対照比較試験
研究グループは、PEG施行時の抗生物質予防投与の簡便な治療戦略について検討するために、単一施設における二重盲検無作為化対照比較試験を行った。
2005年6月~2009年10月までに、カロリンスカ大学病院内視鏡部でPEGを施行された234例が対象となった。これらの患者が、PEGカテーテル挿入直後にコ・トリモキサゾール経口液20mLを投与する群あるいは従来法であるPEGカテーテル挿入前にセフロキシム1.5gを静脈内に予防投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、PEGカテーテル挿入後14日以内における臨床的に顕性化した創傷感染の発症とした。副次的評価項目は、細菌培養および血液検査(高感度C反応性蛋白、白血球数)における陽性率とした。
intention-to-treat解析、per-protocol解析ともに非劣性の条件を満たす
234例のうち、コ・トリモキサゾール群に116例が、対照群には118例が割り付けられた。
intention-to-treat(ITT)解析では、PEGカテーテル挿入後のフォローアップ期間7~14日における創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群が8.6%(10/116例)、対照群は11.9%(14/118例)であり、むしろ新規予防戦略群が3.3%(95%信頼区間:-10.9~4.5%)低かった。
per-protocol解析(対象は両群とも100例ずつ)による創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群10%、対照群13%であり(両群間の差:-3.0%、95%信頼区間:-11.8~5.8%)、ITT解析と同様の結果であった。
事前に規定された非劣性限界値は95%信頼区間上限値15%であった。intention-to-treat解析、per-protocol解析ともにこれを満たしたことから、セフロキシムに対するコ・トリモキサゾールの非劣性が確認された。副次的評価項目も、これらの知見を裏付ける結果であった。
著者は、「PEG施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液20mLの投与は、少なくともPEG施行前のセフロキシム予防投与と同等の効果を有する」と結論し、「この新たな予防戦略は迅速に施行できるうえに安価で安全であり、不必要な投与も減少し、PEGが行われる地域ならば世界中どこでも使用可能である」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)