高血圧患者自身による服薬量の自己調節と血圧の遠隔モニタリングにより、プライマリ・ケアにおいて良好な血圧コントロールが達成可能なことが、イギリスBirmingham大学プライマリ・ケア臨床科学部のRichard J McManus氏らが行った無作為化試験で示された。血圧のコントロールは心血管疾患の予防の要であるが、ライフスタイルへの介入や薬物療法の進歩にもかかわらず、現在の推奨治療で良好な血圧コントロールが得られる高血圧患者は約半数にすぎない。それゆえ、特に降圧治療の主たる現場であるプラマリ・ケアにおける新たな介入法の開発が必要とされており、患者自身による自己管理はその有望なアプローチだという。Lancet誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月8日号)掲載の報告。
血圧コントロールが不良な高血圧患者で、自己管理と通常ケアを比較
TASMINH2の研究グループは、コントロール不良な高血圧患者による自己管理が、通常のケアに比し良好な血圧コントロールをもたらすか否かについて検討する無作為化対照比較試験を実施した。
イギリス国内の24のプライマリ・ケア施設が参加した。対象は、降圧治療を行っても血圧が140/90mmHg以上に達し、自己管理に同意した35~85歳の高血圧患者であった。
これらの患者が、血圧を自己測定して降圧薬の服薬量を自分で調節し、家庭血圧の測定値の遠隔モニタリングを行う群あるいは通常ケア群に1対1の割合になるよう無作為に割り付けられた。治療の割り付け情報は患者にも担当医師にも知らされなかった。
主要評価項目は、治療6ヵ月および12ヵ月の時点におけるベースラインからの平均収縮期血圧の変化とした。欠測したデータの補完は行わず、無作為割り付けの対象となり6ヵ月、12ヵ月に受診して評価項目のデータが得られたすべての患者が解析に含まれた。
治療6ヵ月の血圧低下:自己管理群12.9、対照群9.2mmHg、12ヵ月:17.6、12.2mmHg
527例が登録され自己管理群に263例が、対照群に264例が割り付けられた。主要評価項目の解析が可能であったのは480例(91%)で、自己管理群234例、対照群246例であった。
治療6ヵ月における自己管理群の平均収縮期血圧はベースラインに比べ12.9mmHg(95%信頼区間:10.4~15.5)低下したのに対し、対照群では9.2mmHg(同:6.7~11.8)低下し、その差3.7mmHg(同:0.8~6.6)は統計学的に有意であった(p=0.013)。
治療12ヵ月では、自己管理群における平均収縮期血圧のベースラインからの低下が17.6mmHg(95%信頼区間:14.9~20.3)であったのに対し、対照群の低下は12.2mmHg(同:9.5~14.9)と5.4mmHg(同:2.4~8.5)の差がみられ、有意差を認めた(p=0.0004)。
下肢のむくみが自己管理群で32%(74/234例)と対照群の22%(55/246例)に比べ有意に多くみられたが、これ以外の一般的な有害事象の頻度は両群間に差を認めなかった。
著者は、「患者による高血圧の自己管理と血圧測定の遠隔モニタリングを併用するアプローチは、プライマリ・ケアにおける高血圧のコントロールの新たな治療選択肢として重要であることが示された」と結論している。
(菅野守:医学ライター)