救急外来でのルーチンな強制HIVスクリーニングの効果は?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/03

 



米国疾病管理予防センター(CDC)は、救急外来部門を含む医療機関での、ルーチン(無目標)強制迅速HIVスクリーニングを行うことを推奨している。このアプローチにより発見される診断未確定のHIV感染は0.1%に上るというが、これまで救急部門だけをみた場合の実施の有用性は明らかになっていない。そこで、デンバーヘルス医療センター救急部門Jason S. Haukoos氏らが救急部門のみを対象とする調査を行った。結果、若干だが識別できた患者が増えていたことが明らかになった。ただし病期は進行していたという。JAMA誌2010年7月21日号掲載より。

4ヵ月おきに強制スクリーニング期間を設定し特定できた患者数を調査




調査は、デンバーヘルス医療センター(477床)救急部門で行われ、無目標強制迅速HIVスクリーニングが、医師が確定診断のため迅速検査を依頼した場合と比べて、より多くの新規患者を特定できるかどうかについて検討された。

都市部の公的セイフティネット病院としての役割を担う同センター救急部門には、年間約5万5,000人の患者が訪れる。そのうち検査に同意を示すことが可能だった16歳以上の患者を対象に、2007年4月15日から2009年4月15日の間、4ヵ月おきに強制スクリーニング期間を設け実施した。合間の4ヵ月間は、医師が診断を必要とした場合のみ実施。

主要評価項目は、新規に診断されたHIV感染者数と、スクリーニングおよび診断検査との関連とした。

無目標強制迅速HIVスクリーニングと新規HIV診断は独立して相関




強制スクリーニング期間における適格患者の合計は2万8,043人だった。そのうち6,933人(25%)がHIV検査を受けた。内訳は、強制的に受けた人6,702人(スクリーニング群)、強制期間中だったが医師が診断確定のため必要と判断し受けた人231人(必要診断検査群)だった。

このうち新規HIV患者は、スクリーニング群10/6,702人・0.15%(95%信頼区間:0.07%~0.27%)、必要診断検査群5/231人・2.2%(同0.7%~5.0%)で特定された。

一方、必要診断検査期間における適格患者の合計は2万9,925人。そのうち243人(0.8%)が検査を受け、特定された新規HIV患者は4/243人・1.6%(95%信頼区間:0.5%~4.2%)だった。

強制期間における新規HIV患者の有病率は、15/28,043人・0.05%(同:0.03%~0.09%)、必要診断期間における有病率は、4/29,925人・0.01%(同:0.004%~0.03%)で、無目的強制迅速HIVスクリーニングと新規HIV診断は、母集団、保険種別、必要診断が強制期間中だったかどうかについて補正後も、独立した相関が示された(リスク比:3.6、95%信頼区間:1.2~10.8)。

新規診断患者のCD4細胞数の中央値は、強制期間群で特定された患者の場合は69/microL(IQR:17~430)、必要診断期間群は13/microL(IQR:11~15)だった。

(医療ライター:朝田哲明)