最適な薬物療法を行っても糖化ヘモグロビン(HbA1c)が改善しない2型糖尿病患者は、個別化された強化食事療法アドバイスによって血糖コントロールや体重、BMI、ウエスト周囲長が改善する可能性があることが、ニュージーランドOtago大学のKirsten J Coppell氏らが行った無作為化試験(LOADD試験)で示された。ライフスタイルの改善は2型糖尿病治療の基盤であり、特に適切な食事パターンが推奨されているが、これを遵守するには困難が伴う。また、高血糖で薬物療法を受けている2型糖尿病患者に対する栄養療法のベネフィットを示すエビデンスはないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。
通常治療に6ヵ月間の強化食事療法アドバイスを追加
LOADD試験の研究グループは、最適な薬物療法を行っても高血糖が改善しない2型糖尿病患者に対する強化食事療法による介入は、血糖コントロールや心血管疾患のリスク因子に影響を及ぼすか否かについて検討する、無作為化対照比較試験を実施した。
対象は、最適な薬物療法でもHbA1c>7%のままで、過体重あるいは肥満、高血圧、脂質異常のうち二つ以上がみられる、70歳未満の2型糖尿病患者93例。これらの患者が、通常の糖尿病治療に加え欧州糖尿病学会(EASD)の栄養療法に関する勧告に準拠した強化食事療法のアドバイスを6ヵ月間実施する群(45例)、あるいは通常の糖尿病治療のみを行う対照群(48例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目はHbA1cとし、副次的評価項目は肥満、血圧、脂質プロフィールなどであった。
HbA1c、体重、BMI、ウエスト周囲長が低下、飽和脂肪とタンパク質の摂取量が改善
年齢、性別、ベースライン時の各種測定値で補正したところ、対照群に比べ強化食事療法群でHbA1cが有意に低下し(差:-0.4%、95%信頼区間:-0.7~-0.1%、p=0.007)、体重(同:-1.3kg、同:-2.4~-0.1kg、p=0.032)、BMI(同:-0.5、同:-0.9~-0.1、p=0.026)、ウエスト周囲長(-1.6 cm、-2.7~-0.5 cm、p=0.005)も有意に改善した。
強化食事療法群では、飽和脂肪酸の摂取量が対照群に比べ有意に低下し(エネルギー総量の差:-1.9%、95%信頼区間:-3.3~-0.6%、p=0.006)、タンパク質の摂取量が有意に増加しており(同:1.6%、0.04~3.1%、p=0.045)、これらは両群間で摂取量の差が最も大きい栄養素であった。
著者は、「最適な薬物療法を行ってもHbA1cが改善しない2型糖尿病患者は、個別化された強化食事療法アドバイスを行うことで血糖コントロールとともに体重、BMI、ウエスト周囲長が改善する可能性がある」と結論し、「食習慣の改善には、専門家のアドバイスだけでなく、家族によるサポートや適切な食べ物の選択が可能な環境も求められる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)