認知症の抑制に、果物/野菜摂取の増進とうつ病/糖尿病の予防が有望

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/27

 



認知症の発症を最大限に抑制するアプローチとして、結晶性知能(crystallized intelligence)と果物/野菜の摂取の増進およびうつ病と糖尿病の予防が有望なことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)La Colombiere病院のK Ritchie氏らによるコホート研究で示された。認知症の臨床的、環境的なリスク因子は多岐にわたり、修正可能なことが一般人口を対象とした試験で示されている。そこで、認知症に特異的なリスク因子を検出し、これを除去することで発症を抑制するアプローチが進められている。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。

認知症特異的リスク因子の除去によって発症率はどの程度低減するか




研究グループは、特異的なリスク因子の除去による認知症発症率の低減効果の評価を目的に、7年間に及ぶプロスペクティブなコホート研究を実施した。

対象は、フランス南部の都市モンペリエ在住の65歳以上の住民1,433人[ベースラインの平均年齢72.5(SD 5.1)歳]であった。これらの一般住民に対し、標準化された神経学的検査を施行し、軽度認知障害および認知症の診断を行った。

公衆衛生プログラムにおける優先項目が明らかに




ハザード比を算出し、認知症の修正可能なリスク因子の交絡因子や相互作用を検出するためにCoxモデルを構築した。7年間における軽度認知障害および認知症の発症率のブートストラッピングにより、平均人口寄与割合(PAF)を95%信頼区間とともに算出した。

最終的に得られたCoxモデルを用いて多変量解析を行い、補正PAFを算出したところ、以下の項目が軽度認知障害および認知症の有意なリスク因子であった。

結晶性知能(過去の学習経験の高度な適用によって得られる判断力や習慣)(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.41~2.09、p<0.001、%PAF:18.1、95%信頼区間:10.9~25.4)、うつ病(1.39、1.13~1.71、p=0.002、10.3、3.7~17.2)、果物と野菜の摂取(1.26、1.02~1.56、p=0.04、6.5、0.2~13.1)、糖尿病(1.85、1.34~2.56、p<0.002、4.9、1.9~8.0)、アポリポ蛋白E遺伝子のε4対立遺伝子(1.47、1.16~1.86、p=0.001、7.1、2.4~12.0)。

これらのデータに基づき、著者は「結晶性知能と果物/野菜の摂取を増進させ、うつ病と糖尿病を予防することで、認知症の発症が最大限に抑制される可能性があり、そのインパクトは既知の主要な遺伝学的リスク因子の除去の影響を凌駕する」と結論し、「確実な因果関係は不明だが、これらの知見は公衆衛生プログラムにおいて優先すべき項目を示唆すると考えられる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)