STEMI患者へのPCI、システム1時間遅延ごとに死亡率1割上昇

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/31

 



ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の、救急通報を受けてからの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施までの所要時間(システム遅延)が、1時間増すごとに、死亡率が1割上昇することが明らかにされた。デンマークAarhus大学病院循環器部門のChristian Juhl Terkelsen氏らが、6,000人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。STEMI患者が、医療機関に到着してから再潅流治療を受けるまでの、いわゆる「ドアからバルーンまで」(door-to-balloon)の遅延とアウトカムに関する研究はこれまでにも発表されているが、救急通報時点から医療機関到着までの時間を含む、システム遅延とアウトカムに関する研究は、これが初めてという。

6,209人を中央値3.4年追跡




研究グループは、2002年1月1日~2008年12月31日にかけて、デンマーク内で多数の症例数をこなす3ヵ所のプライマリPCIセンターで、発症から12時間以内にPCIを実施した、合わせて6,209人を対象に試験を行った。

救急通報を受けてからPCIのガイド・カテーテル挿入までの所要時間を「システム遅延」、通報からPCIセンター到着までの所要時間を「前病院遅延」、PCIセンター到着からカテーテル挿入までの所要時間を、「ドアからバルーンまで遅延」と定義した。

追跡期間の中央値は、3.4年(四分位範囲:1.8~5.2)だった。

システム遅延、前病院遅延、ドアからバルーンまで遅延のそれぞれが長期死亡の独立因子




結果、システム遅延が0~60分までの群(347人)では、長期死亡率が15.4%(43人)だった。システム遅延が増大するにしたがって同死亡率も増加し、61~120分(2,643人)では23.3%(380人)、121~180分(2,092人)では28.1%(378人)、181~360分(1,127人)では30.8%(275人)だった(p<0.001)。

多変量解析を行い、死亡に関する他のリスク因子を補正した後、システム遅延は死亡に関する独立リスク因子で、1時間遅延による補正後オッズ比は、1.10(95%信頼区間:1.04~1.16)だった。

同様に、前病院遅延とドアからバルーンまで遅延もそれぞれ、長期死亡に関する独立因子だった(ハザード比:それぞれ1.10、
1.14)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)