末期患者の呼吸困難、緩和的酸素吸入は有効か?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/09/16

 



末期的病態の患者の難治性呼吸困難の症状緩和では、鼻カニューレによる緩和的酸素吸入療法の効果は室内空気吸入療法と変わらないことが、アメリカ・デューク大学医療センター腫瘍内科のAmy P Abernethy氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。末期的病態では、心不全の65%、肺がんの70%、COPDの90%で重篤な呼吸困難がみられ、死亡に至る過程で慢性的に増強してQOLや精神的健康、社会的機能が徐々に損なわれる。長期的な酸素吸入が不適な末期的病態の患者の呼吸困難の治療法として、緩和的酸素吸入が広く行われているが、そのベネフィットは明確ではないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。

緩和的酸素吸入のベネフィットを評価




研究グループは、末期的病態の患者の息切れの解消法として、鼻カニューレを介する緩和的酸素吸入の効果を室内空気吸入と比較する二重盲検無作為化対照比較試験を実施した。

オーストラリア、アメリカ、イギリスの9施設から、末期的病態で難治性の呼吸困難がみられ、動脈血酸素分圧(PaO2)7.3kPa以上の患者が登録され、鼻カニューレを介して2L/分の酸素を吸入する群あるいは室内空気を吸入する群に無作為に割り付けられた。患者は、自宅で酸素濃縮機を用いて1日15時間以上吸入するように指導され、7日間の評価が行われた。

主要評価項目は、数値化スケール(0~10)による息切れとし、1日2回(朝、夕)の測定が行われた。

個々の患者で負担の少ない治療戦略を選択




239例が登録され、酸素吸入群に120例が、室内空気吸入群には119例が割り付けられた。7日間の測定を完遂したのはそれぞれ112例(93%)、99例(83%)だった。

ベースラインから6日目までの朝の平均息切れの変化は、酸素吸入群が-0.9ポイント(95%信頼区間:-1.3~-0.5)、室内空気吸入群は-0.7ポイント(同:-1.2~-0.2)であり、有意な差は認められなかった(p=0.504)。夕方の平均息切れの変化は、それぞれ-0.3ポイント(同:-0.7~0.1)、-0.5ポイント(同:-0.9~-0.1)で、やはり有意差はなかった(p=0.554)。

副作用の頻度は両群間に差を認めなかった。極度の眠気が、酸素吸入群で10%(12/116例)、室内空気吸入群では13%(14/108例)に発現した。極度の鼻の炎症が、酸素吸入群の2%(2/116例)、室内空気吸入群の6%(7/108例)にみられている。酸素吸入群の1例が、かなり手のかかる鼻出血をきたした。

著者は、「鼻カニューレによる酸素吸入は、室内空気吸入に比べ末期的病態の患者の難治性呼吸困難の症状緩和にベネフィットをもたらさない。したがって、個々の患者で酸素吸入の効果を簡便に評価したうえで、負担の少ない治療戦略を選択すべきである」と結論している。

(菅野守:医学ライター)