医師の、医薬品・医療機器業界からの金品受理に対する許容度は、研修医時代に費やした自己犠牲を思い出すと増大するという。この傾向は、自己犠牲について思い出させた上で、それが金品受理の根拠になるとの合理的理由を提示すると、さらに強まるという。米国Carnegie Mellon大学のSunita Sah氏らが、米国レジデント医約300人について行った無作為化比較対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。
小児科医と家庭医のレジデントを3群に分け調査
Sah氏らは、2009年3~7月にかけて、小児科と家庭医のレジデント医、合わせて301人を無作為に3群に分け、企業からの金品受理に関して調査を行った。
一群には、研修医時代に払った自己犠牲を再確認してもらうような質問をした上で、企業からの金品受理に関する許容度の質問をした(自己犠牲群:120人)。別の一群には、同様に自己犠牲に関する質問をした上で、それが企業からの金品受理の合理的理由付けになると示唆する質問を行い、金品受理に関する許容度の質問をした(合理性群:121人)。さらに対照群として、企業からの金品受理に関する許容度の質問のみを行った(対照群:60人)。
金品受理の寛容さ、自己犠牲再確認で1.8倍、合理性提示でさらに1.5倍に
その結果、自己犠牲群では、企業からの金品を許容するとした医師の割合が47.5%(57人)と、対照群の21.7%(13人)に比べ有意に大きかった(オッズ比:1.81、95%信頼区間:1.27~2.58、p=0.001)。
さらに金品受理の合理性を示した合理性群では、医師の多くが質問項目に示された合理性の理由には同意しなかったものの、自己犠牲群よりも金品を許容するとした割合は大きく、60.3%(73人)だった(自己犠牲群に対するオッズ比:1.45、同:1.22~1.72、p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)