前立腺がんスクリーニングは、診療ガイドラインで推奨されているが、スクリーニングが全体としての死亡率や、患者にとって最も重要なアウトカムである疾患特異的な死亡率を改善するかどうか、さらにスクリーニングの有益性ががんの過剰検出や過剰診療が招く有害およびコストを上回るかどうかについては明らかにされていない。米国フロリダ大学泌尿器・前立腺センターのMia Djulbegovic氏らの研究グループは、前立腺がんスクリーニングの有益性と有害さのエビデンスを検討するため、これまでに発表されている前立腺がんスクリーニングに関する無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析を試みた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。
6件の無作為化試験データを解析
Djulbegovic氏らは、Medline、Embase、CENTRALなどの電子データベースで2010年7月までにリストアップされた中から、前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング(直腸診の有無にかかわらず)群と非スクリーニング群との比較した無作為化試験を選び検討した。
データ抽象化と方法論的な質の評価はGRADEアプローチ法を用い、2人の独立したレビュアーによって評価し、主たる研究者によって検証が行われた。マンテル‐ヘンツェル検定法とランダム効果モデル下での相対リスクと95%信頼区間検定が行われた。
計6件の無作為化試験の、基準を満たした38万7,286例が解析対象となった。
スクリーニングの有意な効果認められず
スクリーニングは、前立腺がんと診断される可能性の増大(相対リスク:1.46、95%信頼区間:1.21~1.77、 P<0.001)、またI期前立腺がんとの診断を受ける可能性の増大(同:1.95、1.22~3.13、P=0.005)と有意な関連が認められた。
一方で、スクリーニングの効果と、前立腺がんによる死亡(同:0.88、0.71~1.09、P=0.25)、また全体としての死亡(同:0.99、0.97~1.01、P=0.44)とにおいていずれも有意な関連は認められなかった。
なお、解析したいずれの試験にも、方法論的な重大な限界が一つ以上認められた。また、スクリーニングが参加者のQOLに与えた影響に関するデータは入手できなかった。スクリーニングに関連して起こりうる有害事象の情報もほとんど入手できなかった。
以上を踏まえて研究グループは、「無作為化試験からのエビデンスとしては、直腸診の有無にかかわらず前立腺がんのためのPSAスクリーニングのルーチンな実施は支持できない」と結論づけている。