外来で様々な初期徴候を示す安定したアテローム血栓症患者のうち、心血管イベント発生リスクは、糖尿病があると約1.4倍、前年に虚血イベントがあった場合には約1.7倍に増大することが明らかにされた。多血管病(polyvascular disease)がある場合には、同リスクは約2倍になるという。米国VA Boston Healthcare SystemのDeepak L. Bhatt氏らが、臨床所見からハイリスク群を特定する簡便な方法について検討するため行った、約4万5,000人を4年間追跡した「Reduction of Atherothrombosis for Continued Health」(REACH)試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。
心血管イベント発生は5,481人
REACHでは、2003~2004年にかけて、29ヵ国、3,647ヵ所の医療機関を通じて、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、アテローム血栓症の複数のリスク因子を持つ患者、合わせて4万5,227人について試験を開始し、2008年(最終データは2009年4月)まで4年にわたる追跡が行われた。
主要評価項目は、心血管疾患死、心筋梗塞、脳卒中のいずれかだった。
その結果、追跡期間中にいずれかのアウトカムに達した被験者は、5,481人だった。そのうち、心血管疾患死は2,315人、心筋梗塞は1,228人、脳卒中は1,898人で、40人は心筋梗塞と脳卒中を同日に発症した。
心血管イベント発生ハザード、多血管病1.99、前年虚血イベント1.71、糖尿病1.44
アテローム血栓症が認められた被験者のうち、同アウトカム発生リスクが最も高かったのは、試験開始時点で虚血イベントの既往歴があった人(2万1,890人)で、発生率は18.3%(95%信頼区間:17.4~19.1)だった。
安定した冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患の人(1万5,264人)は同発生リスクがより低く、12.2%(同:11.4~12.9)だった。
また、アテローム血栓症は認められずリスク因子のみを有する人(8,073人)は同発生リスクが最も低く、9.1%(同:8.3~9.9)だった(それぞれの比較に関するp<0.001)。
各エンドポイントに関するハザード比が有意に高かったのは、多血管病1.99(同:1.78~2.24、p<0.001)、前年の虚血イベント発生1.71(同:1.57~1.85、p<0.001)、糖尿病1.44(同:1.36~1.53、p<0.001)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)