身体活動および有酸素能力のレベルは年齢と共に減少し、一方で肥満症の有病率は年齢と共に増大する傾向がある。それにもかかわらず高齢者の心肺フィットネスおよび肥満と、死亡との関連についてはこれまで十分に調査検討されていない。そこで、サウスカロライナ大学アーノルド公衆衛生学校(アメリカ)運動科学部門のXuemei Sui氏らが調査を行い報告した。JAMA誌12月5日号より。
60歳以上2,603人の心肺フィットネス、肥満と死亡との関連を調査
研究対象は、1979~2001年の間に基線健康診査を受けエアロビクスセンター縦断研究に登録された60歳以上の2,603人。平均年齢64.4歳(SD 4.8)、女性が19.8%を占める。
心肺フィットネスの評価は最大運動負荷試験にて行い、性特異的分布による最低5分位を低心肺フィットネスと定義した。肥満症の評価はBMI、腹囲、体脂肪率で行い、臨床ガイドラインに従ってグループ分けされた。
主要評価項目は、2003年12月31日までの全死亡。
死亡率は低心肺フィットネス群32.6、高心肺フィットネス群8.1
平均追跡期間12年、31,236人年のうち死亡数は450人だった。
1,000人年の死亡率(年齢、性、検査年補正後)は、BMI 18.5~24.9群、25.0~29.9群、30.0~34.9群、35.0以上群でそれぞれ13.9、13.3、18.3、31.8であった(P=0.01)。
正常腹囲群では13.3、高腹囲群(女性88 cm以上、男性102 cm以上)では18.2(いずれもP=0.004)、標準体脂肪率群では13.7、高体脂肪率群(女性30%以上、男性25%以上)では14.6(いずれもP=0.51)だった。
心肺フィットネスでは5分位増加ごとに32.6、16.6、12.8、12.3、8.1(P<0.001)との結果だった。
臨床家は高齢者への運動指導を重視すべき
腹囲と死亡率との関連は、喫煙、基線健康状態、BMI補正後も維持された(P=0.02)が、心肺フィットネス補正が加わった後は維持しなかった(P=0.86)。
心肺フィットネスと死亡率との関連は、喫煙、基線健康、BMI、さらに腹囲、体脂肪率補正後も維持された(P<0.001)。
以上の結果からSui氏らは、「心肺フィットネスは高齢者にとって、有意な独立した死亡予測因子である」と述べ、「臨床家は正常体重、過体重にかかわらず高齢者に対し、規則的な身体活動を推奨し運動耐容能を保つことを重視すべきである」と結論づけた。
(武藤まき:医療ライター)