心臓が原因で院外心停止を起こした人に対し、その場に居合わせた医療専門家ではない一般市民による心肺蘇生法(CPR)は、胸骨圧迫のみのCPRが、従来のCPRよりも退院時生存率が1.6倍高いことが明らかにされた。米国アリゾナ州保健局のBentley J. Bobrow氏らが、5年にわたり、院外心停止をした18歳以上5,000人超を対象に行った前向き観察コホート研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月6日号で発表した。
一般市民によるCPR、従来法666人、胸骨圧迫のみ849人
研究グループは、2005年1月1日~2009年12月31日にかけて、アリゾナ州で心臓が原因で院外心停止した18歳以上、5,272人について調査を行った。そのうち、医療従事者によるCPRを受けた人、心停止が医療施設内だった人を除く4,415人について追跡した。
被験者のうち、その場に居合わせた人によるCPRを受けなかったのは、2,900人だった。一方、一般市民により、従来CPRを受けたのは666人、胸骨圧迫のみCPR(compression-only CPR;COCPR)を受けたのは849人だった。
5年間でCOCPR実施は急増、生存率も3.7%から9.8%に
主要評価項目とした退院時生存率は、CPRを受けなかった群は5.2%(95%信頼区間:4.4~6.0)、従来CPRを受けた群は7.8%(同:5.8~9.8)だったのに対し、COCPRを受けた群は13.3%(同:11.0~15.6)で最も高率だった。
退院時生存に関する、従来CPR群の非CPR群に対する補正後オッズ比は0.99(同:0.69~1.43)だったのに対し、COCPR群の非CPR群に対する補正後オッズ比は、1.59(同:1.18~2.13)であり、同従来CPR群に対する補正後オッズ比は、1.60(同:1.08~2.35)だった。
また、院外心停止の際の居合わせた人によるCPR実施率は、2005年から2009年にかけて、28.2%から39.9%に増加していた(p<0.001)。CPRのうちCOCPRの占める割合も同期間で、19.6%から75.9%に増加し(p<0.001)、生存率も3.7%から9.8%に増加していた(p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)