車の排気ガスによる大気汚染は重篤な健康被害をもたらす。そのリスクは呼吸器疾患を有する人にとってはより高まる可能性があることから、英国立心臓肺研究所(NHLI)のJames McCreanor氏らは、喘息患者を対象に、都市沿道での短期曝露でディーゼル車からどれぐらいの影響を受けるのかを調査した。NEJM誌12月6日号掲載報告から。
喘息患者60人を市街地の大通り・公園内で2時間ずつ曝露比較
調査は、軽度あるいは中等度の喘息成人患者60人に、ロンドン市街のオックスフォード通りを2時間歩いてもらい、別の機会に同じくロンドン市街にある公園ハイドパークを2時間歩いてもらい、それぞれ詳細なリアルタイム曝露(生理学的・免疫学的)を測定するという方法で行われた。
その結果、参加者がハイドパークでよりオックスフォード通りで、2.5μm以下の微粒子(1μm=1000分の1ミリ)、超微細粒子、元素状炭素(エレメンタルカーボン;煤)、二酸化窒素の有意な高度曝露があったことが示された。
肺・呼吸器機能低下は超微細粒子とエレメンタルカーボンで最もよく相関
オックスフォード通りを2時間歩くことは、無症候性だが1秒量(FEV1)と努力肺活量(FVC)の低下を招いた。FEV1低下は最大6.1%、FVC低下は最大5.4%。それぞれの値はハイドパークでの曝露後は1.9%、1.6%で、オックスフォード通りでの低下が有意に大きい。
好中球炎症を示すバイオマーカー(喀痰ミエロペルオキシダーゼ)は、ハイドパーク曝露後4.24ng/mL上昇、これに対しオックスフォード通り曝露後は24.5ng/mL(P=0.05)上昇を示した。
気道の酸性化(pH減少)もみられ、ハイドパーク曝露後の最大減少は0.04%、オックスフォード通り曝露後は1.9%に上っていた(P=0.003)。
これらの変化と最もよく相関していたのは、超微細粒子とエレメンタルカーボンだった。
なお曝露による影響は、軽度の喘息被験者より中等度の喘息被験者のほうが大きかった。
McCreanor氏らは、「我々の観察結果は、喘息患者の肺機能とディーゼル車曝露との関連についての疫学的エビデンスを実証し説明するものとなった」と結論づけている。