ショ糖は、痛みを伴う処置を受ける新生児の疼痛緩和に有効か

提供元:ケアネット

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公開日:2010/10/21

 



ショ糖の経口投与は、痛みを伴う処置を受けた新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応に影響を及ぼさず、鎮痛薬としては有効ではないことが、イギリス・オックスフォード大学のRebeccah Slater氏らが行った無作為化試験で示唆された。多くの新生児が、繰り返し施行される侵襲的処置を受けるために入院するが、これらの処置による疼痛が神経発達に及ぼす短期的、長期的な有害作用のエビデンスが蓄積されている。ショ糖の行動的および生理的な疼痛スコアの改善効果を根拠に、新生児の処置痛の軽減にその経口投与が推奨されているが、これらの疼痛スコアの改善は必ずしも新生児の疼痛除去に関連しない可能性があるという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。

ショ糖と滅菌水で、脳、脊髄の疼痛反応を比較




研究グループは、新生児に対する痛みを伴う処置がもたらす脳および脊髄の疼痛反応を、ショ糖の経口投与が軽減するか否かを検討する二重盲検無作為化対照比較試験を行った。

2009年2月~2010年3月までに、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ病院で誕生した新生児59人が登録された。これらの新生児が、痛みを伴う処置として、臨床的に必要とされる血液サンプルの採取を目的に踵を穿刺された。

この処置に先立ち、新生児は、24%ショ糖液0.5mLあるいは滅菌水0.5mLを1mL注射器で舌前面に直接に滴下する群のいずれかに無作為に割り付けられた。研究者、担当医、両親には投与された溶液の情報は知らされなかった。

主要評価項目は、1回の穿刺で引き起こされた脳の疼痛反応(脳波検査のデータを記録し、主成分分析で判定)とし、副次評価項目は行動的(顔の表情の変化など)、生理的(脳波、パルス酸素濃度測定など)指標や観察的疼痛スコア[新生児の疼痛評価の指標である未熟児疼痛プロファイル(PIPP)]による評価、および脊髄侵害反射離脱反応とした。

観察的疼痛スコアは改善したが、脳、脊髄の疼痛反応に差はない




ショ糖群に29人が、滅菌水群は30人の新生児が割り付けられ、主要評価項目の解析はそれぞれ20人、24人で可能であった。

穿刺後の脳の疼痛反応の平均値は、ショ糖群が0.10(95%信頼区間:0.04~0.16)、滅菌水群は0.08(同:0.04~0.12)であり、両群間に差を認めなかった(p=0.46)。刺激を受けた足の大腿二頭筋から得られた脊髄侵害反射離脱の程度および反応潜時には、両群間で有意な差はみられなかった。

平均PIPPスコアは、ショ糖群が5.8(95%信頼区間:3.7~7.8)と、滅菌水群の8.5(同:7.3~9.8)に比べ有意に低く(p=0.02)、投与後に表情の変化がみられない新生児の割合もショ糖群で多かった[35%(7/20人)vs. 0%(0/24人)、p<0.0001]。

著者は、「これらのデータは、ショ糖の経口投与は新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応には影響を及ぼさないことを示唆するため、鎮痛薬としては有効でない可能性がある」と結論し、「ショ糖の投与により、痛みを伴う処置後の新生児の臨床的な観察的疼痛スコアが改善されても、それを疼痛の除去と解釈すべきではない」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)