慢性腎臓病(CKD)は病期ステージ1から、もともと血管疾患が認められなかった人のその後の冠動脈心疾患リスクを上昇することが報告された。イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生プライマリ・ケア部門のEmanuele Di Angelantonio氏らが、約1万7,000人の住民ベースの前向きコホート研究で明らかにしたもので、BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月30日号)で発表された。
CKDステージの情報が入手可能だった33~81歳の1万6,958人を追跡
Angelantonio氏らは、住民ベースでの、CKDステージごとの重大心血管疾患発生との関連および非血管死亡との関連を明らかにするため、レイキャビク(アイスランド)の住民を対象に調査を行った。
血管疾患が認められず、eGFR、尿蛋白に基づくCKDステージの情報が入手可能だった33~81歳の1万6,958人が登録され、重大冠動脈心疾患および死亡のハザード比を主要評価項目に検討された。
登録時にCKDステージ1の人、冠動脈心疾患リスクが1.55倍
被験者のうち、登録時にCKDを有していたのは1,210人(7%)だった。
追跡期間中央値24年の間に、冠動脈心疾患を発症したのは4,010人、脳卒中死亡559人、非血管系が原因の死亡は3,875人だった。
基準群(eGFR:75~89mL/min/1.73m2、尿蛋白なし)と比べて、GFRが標準範囲値より低い腎機能が低下した人は、冠動脈心疾患リスクの上昇はみられなかった。
対照的に、登録時にCKDを有していた1,210人(7%)の冠動脈心疾患リスク(ハザード比)は、従来心血管リスクで補正後、ステージ1で1.55(95%信頼区間:1.02~2.35)、ステージ2で1.72(1.30~2.24)、ステージ3aで1.39(1.22~1.58)、ステージ3bで1.90(1.22~2.96)、ステージ4で4.29(1.78~10.32)だった。
そして、従来心血管リスクにCKD情報を加味することで、冠動脈心疾患リスクの区分および再分類指標を上昇させた(P<0.01)。C指数上昇は0.0015で、糖尿病に関する情報(0.0024)や喫煙情報(0.0124)を加味した場合よりは少なかった。
CKDのがん死亡ハザード比は0.97(0.82~1.15)、その他非血管死亡ハザード比は1.26(1.07~1.50)であった。
研究グループは、「従来リスク因子にCKD評価を加味することは、わずかではあろうが、予測される冠動脈心疾患リスクを改善する。今後さらにCKDと、がんを除く原因による非血管死因との関連を調査する必要がある」とまとめている。