米国で冠動脈バイパス術(CABG)の術中・術後の輸血率は、医療機関によって85%差以上の大幅な格差があることが明らかになった。またその原因が、患者の年齢、性別、症状の程度といったケース・ミックスにあると説明できるのは、約2割程度だったという。周術期の輸血はコスト高の割に安全面に不安があり、実施を減らそうとの動きがある。しかし実施の現状については明らかになっていなかった。そこで米国Duke大学医療センター周術期臨床研究部門のElliott Bennett-Guerrero氏らが、10万人超のCABGを実施した患者について観察コホート試験を実行。JAMA誌2010年10月13日号で発表した。
米国内798ヵ所、10万2,470人についてCABG周術期輸血率を調査
研究グループは、2008年に全米798ヵ所の医療機関で、一つの血管に対する初回CABGを受けた人10万2,470人について調査を行った。
主要評価項目は、術中・術後の赤血球輸血、新鮮凍結血漿輸血、血小板輸血のいずれかの実施率だった。
被験者のデータは、Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgeryデータベースに集積した。
赤血球輸血、新鮮凍結血漿輸血、血小板輸血いずれの実施率も大幅格差
結果、2008年に人工心肺使用心停止下CABGを100回以上実施した408施設における、合わせて8万2,446人について見てみたところ、赤血球輸血実施率は7.8~92.8%、新鮮凍結血漿輸血率は0~97.5%、血小板輸血率は0.4~90.4%だった。
被験者全体について多変量解析を行った結果、患者個人のリスク補正後、輸血率は医療施設の場所(p=0.007)、教育病院か否か(p=0.03)、病院規模(p<0.001)によって、有意な差があることが認められた。
だが、こうした3つの病院特性因子を合わせても、リスク補正後赤血球輸血実施率の格差があることについて11.1%しか説明できなかった。また患者のケース・ミックスも、要因としては20.1%だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)