閉経後女性へのホルモン補充療法、乳がん死亡リスクも増加の傾向

閉経後女性への、エストロゲン+プロゲスチンのホルモン補充療法は、侵襲性乳がんやリンパ節転移陽性のリスクが増加すること、乳がんによる死亡のリスクも同併用療法とともに増加する傾向にあることが報告された。米国UCLAメディカルセンターのRowan T. Chlebowski氏らが、約1万7,000人の女性をおよそ11年追跡した「Women’s Health Initiative」(WHI)から明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表した。すでに発表された追跡期間約8年のWHIの結果で、エストロゲン+プロゲスチン投与により乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。
閉経後女性1万6,608人を平均11年追跡
WHIは、米国内40ヵ所の医療機関を通じ、50~79歳の閉経後の女性で子宮摘出術を受けていない1万6,608人を対象に試験が行われた。
被験者は無作為に2群に分けられ、一方には結合型ウマエストロゲン0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/日の合剤(Prempro)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。
追跡は、当初2005年3月31日まで予定されていたが、それ以降、当初被験者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡した。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差:2.7年)だった。
プラセボ群に対し乳がん死亡1.96倍、乳がん発症後総死亡率1.57倍
その結果、侵襲性の乳がんを発症したのは、プラセボ群では293人(年率0.34%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では385人(年率0.42%)と、1.25倍だった(95%信頼区間:1.07~1.46、p=0.004)。
両群の乳がんは、組織学的所見、グレードについての差はみられなかったものの、リンパ節転移陽性となったのは、プラセボ群では43人(16.2%)だったのに対し、エストロゲン+プロゲスチン群では81人(23.7%)と、1.78倍に上った(95%信頼区間:1.23~2.58、p=0.03)。
また乳がんによる死亡も、プラセボ群が12人(年率0.01%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が25人(年率0.03%)と、1.96倍だった(同:1.00~4.04、p=0.049)。さらに乳がん発症後の総死亡率も、プラセボ群が31人(年率0.03%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が51人(年率0.05%)と、1.57倍だった(同:1.01~2.48、p=0.045)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
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