新生児聴覚スクリーニングは、生後2週間までに行った方が、生後9ヵ月に実施するよりも、永久小児聴覚障害児の3~5歳時点での発達アウトカムが良好であることが、オランダ・ライデン大学メディカルセンターのAnna M. H. Korver氏らが、約57万人の小児を対象に行った試験で明らかになった。新生児聴覚スクリーニングは世界各国で実施されているが、同プログラム実施時期を支持する確固たるエビデンスはほとんどない。JAMA誌2010年10月20日号発表より。
新生児スクリーニング実施の約34万人、生後9ヵ月スクリーニング実施の約23万人を追跡
オランダでは、2002~2006年の間に、国内65地域で、生後9ヵ月時点で行う聴覚スクリーニングを、生後2週間までに行う新生児聴覚スクリーニングに切り替えが行われた。
そこで研究グループは、オランダで2003~2005年に生まれた小児全員を対象に、2009年末まで追跡調査を行った。新生児聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれた子どもは33万5,560児、生後9ヵ月聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれたのは23万4,826児だった。
追跡期間中、永久小児聴覚障害と診断されたのは、新生児スクリーニング群263児(1000児当たり0.78児)、9ヵ月スクリーニング群171児(同0.73児)だった。そのうち両群計301児(69.4%)を対象に解析が行われた。両群間には主要なコミュニケーション法や教育方法について違いはなかった。
発達アウトカム、QOLともに新生児スクリーニング群のスコアが良好
新生児スクリーニング群の80児、9ヵ月スクリーニング群の70児について、3~5歳時点での発達アウトカムについて評価を行ったところ、多変量解析の結果、「Child Development Inventory」により評価した全般的な発達アウトカムスコアは、新生児スクリーニング群の方が、9ヵ月スクリーニング群よりも良好だった(p=0.003)。具体的には、社会的発達については、両群の指数の差は8.8(95%信頼区間:0.8~16.7)、粗大運動に関する指数の差は9.1(同:1.1~17.1)と、いずれも新生児スクリーニング群の方が良好だった。
また、生活の質(QOL)スコアも、両群の差は5.3(同:1.7~8.9)と、新生児スクリーニング群の方が良好だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)