冠動脈心疾患のリスク評価におけるSNPに基づく遺伝的リスクスコアの有用性

提供元:ケアネット

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公開日:2010/11/04

 



冠動脈心疾患に関連する13の一塩基多型(SNP)に基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能なことが、フィンランド・ヘルシンキ大学のSamuli Ripatti氏らが行った症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果から明らかとなった。冠動脈心疾患の原因は複雑であり、ライフスタイルや遺伝的因子の影響が大きく、早発性の冠動脈心疾患の家族歴は独立のリスク因子である。症例対照研究のデザインを用いた全ゲノム関連試験では、冠動脈心疾患、心筋梗塞あるいはこの双方と関連する13の遺伝子領域のSNPが同定されている。Lancet誌2010年10月23日号掲載の報告。

13のSNPと冠動脈心疾患の関連を評価




研究グループは、プロスペクティブなコホート研究によって、SNPと冠動脈心疾患の関連の外的妥当性を確立し、より正確にリスクを予測するための症例対照研究を実施した。

最近発見された13のSNPと冠動脈心疾患の関連について検討するために、フィンランドとスウェーデンにおいて症例対照研究(冠動脈心疾患患者3,829例および非冠動脈心疾患の対照4万8,897人)およびプロスペクティブなコホート研究(心血管疾患のない3万725人)を行った。

13のSNPを多座遺伝的リスクスコア(multilocus genetic risk score)でモデル化し、Cox比例ハザードモデルを用いて遺伝的リスクスコアと冠動脈心疾患発症の関連を推定した。症例対照研究では、ロジスティック回帰モデルを用いて個々のSNPと遺伝的リスクスコアの五分位数の関連について解析した。

遺伝的リスクスコアと初回冠動脈心疾患の発症が相関




コホート研究では、フォローアップ期間中央値10.7年の間に1,264人が初回冠動脈心疾患を発症した。遺伝的リスクスコアは初回冠動脈心疾患の発症と相関を示した。

遺伝的リスクスコアの五分位数が最低の群と比較すると、最高の群は従来のリスクスコアで補正したモデルにおける冠動脈心疾患のリスクが1.66倍に上昇していた(95%信頼区間:1.35~2.04、線形傾向に対するp=0.00000000073)。家族歴で補正しても、これらの推定値に変化はなかった。

遺伝的リスクスコアは従来のリスク因子や家族歴で補正してもC indexを改善せず(p=0.19)、net reclassification improvementにも影響を及ぼさなかった(2.2%、p=0.18)。しかし、integrated discrimination indexに対してはわずかな影響が確認された(0.004、p=0.0006)。症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果は類似していた。

著者は、「冠動脈心疾患に関連する13のSNPに基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能である。これら13のSNPの臨床使用の可能性については明らかではない」と結論している。

(菅野守:医学ライター)