低所得高齢者は複数の慢性疾患を有していながらも、ほとんどが標準的な治療さえも受けていない。インディアナ大学老年学研究センターのSteven R. Counsell氏らのグループは、プライマリ・ケアの質を高めるため、低所得高齢者に対するケアマネジメント・モデルの有効性を検証した。JAMA誌2007年12月12日号より。
医師・看護師・ソーシャルワーカーが在宅ケア
研究は、連邦政府が定める貧困ラインの200%未満の年収しかない65歳以上の951例を対象とした無作為化試験で、2002年1月から2004年8月にかけて実施された。プライマリ・ケア医は、在宅ケアによる介入群(474例)または地域保健センターでの通常ケア群(477例)のいずれかを担当するようランダムに割り当てられた。
介入群は2年間、プライマリ・ケア医ならびに高齢者医療集学チームと連携したナースプラクティショナーおよびソーシャルワーカーから、一般的な老年期疾患に関する12のケア・プロトコルに従って在宅でのケアマネジメントを受けた。
主要評価項目は、疾患非特異的な健康関連スケールであるSF-36の得点と、手段的日常生活動作と基本的日常生活動作(ADLs)の要約尺度、そして救急治療部(ED)への通院率、入院率とした。
SF-36の4項目で有意に改善、およびハイリスク群の医療利用度が低下
全例解析によれば、24ヵ月後には介入群に関しては通常ケア群と比較して8項目のSF-36スケールのうち4項目でかなり改善していることが明らかになった。その4項目は、全身の健康度(0.2対-2.3、P=0.045)、活力(2.6対-2.6、P<0.001)、社会生活機能(3.0対-2.3、P=0.008)、心の健康(3.6対-0.3、P=0.001)で、さらに精神面Mental Component Summaryの得点でも有意な改善がみられた(2.1対-0.3、P<0.001)。しかし、ADLsまたは死亡率に関するグループ差は見いだされなかった。
1,000人当たりの2年累積ED通院率は介入群で低かったが(1,445[n=474]対1,748[n=477]、P=0.03)、1,000人当たり入院率に有意な差はなかった(700[n=474]対740[n=477]、P=0.66)。入院ハイリスクとあらかじめ定義されたグループ(介入群112例と通常ケア群114例)のED通院率と入院率は、2年目の介入群で低下していた(それぞれ848[n=106]対1,314[n=105]、P=0.03と396[n=106]対705[n=105]、P=0.03)。
集中的な在宅ケアマネジメントはケアの質向上に結びつくとともに、ハイリスク群では救急医療の利用率を低下させたが、健康関連QOLの改善はまちまちで、身体機能アウトカムは群間の差はない。
これらの結果から研究グループは、より目標を絞り込むことでプログラムの有効性が増すかどうか、また救急医療の利用率低下がプログラムコストを相殺するかどうかについて、さらなる研究が必要だとまとめた。
(朝田哲明:医療ライター)