突然の激しい頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の有無の推定が可能であり、不必要な検査も抑制できることが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らが行ったコホート研究で示された。突然の激しい頭痛がみられる救急患者では、初発時に神経学的な障害がない場合でもくも膜下出血発症の可能性があり、この可能性を除外するにはCT所見が陰性であっても従来から腰椎穿刺が行われている。また突然の頭痛のほとんどが良性で治療は不要だが、十分な検討が行われていないため不必要な放射線曝露や腰椎穿刺後頭痛が行われているという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年10月28日号)掲載の報告。
くも膜下出血のリスクが高い頭痛患者の臨床的な背景因子を検討
研究グループは、神経学的な障害がみられない頭痛患者のうち、くも膜下出血のリスクが高い患者の臨床的な背景因子を同定する目的で、プロスペクティブなコホート研究を行った。
2000年11月~2005年11月までに、カナダの6つの大学付属の三次救急医療教育病院から、神経学的な障害がみられず、発症後1時間以内に頭痛がピークに達した非外傷性頭痛患者のデータを収集した。
くも膜下出血は、(1)頭部CT画像上でくも膜下腔の出血像、(2)脳脊髄液中のキサントクロミー、(3)脳血管撮影における陽性所見とともに脳脊髄液の最終サンプル中に赤血球を認める場合と定義した。
3つの決定ルールの感度は100%、特異度は28.4~38.8%
登録された1,999例中130例がくも膜下出血を発症した。平均年齢は43.4(16~93)歳、1,207例(60.4%)が女性で、1,546例(78.5%)が「人生で最悪の頭痛」と訴えた。
13の病歴に関する因子と3つの検査所見に関する因子が、くも膜下出血と有意な相関を示した。再帰分割法を用いてこれらの因子の様々な組み合わせから、以下の3つの臨床的な決定ルールを策定した。
・ルール1:40歳以上、項部の痛みあるいは硬直の訴え、意識消失、労作性頭痛
・ルール2:救急車による搬送、45歳以上、1回以上の嘔吐、拡張期血圧>100mmHg
・ルール3:救急車による搬送、収縮期血圧>160mmHg、項部の痛みあるいは硬直の訴え、年齢45~55歳
これらのルールの感度および陰性予測値はいずれも100%、特異度はルール1が28.4%、ルール2が36.5%、ルール3は38.8%であった。ルールのいずれかを用いれば、頭部CT、腰椎穿刺あるいはこの両方の検査の施行率は現在の82.9%から63.7~73.5%まで抑制されると推定された。
著者は、「発症後1時間以内にピークに達した頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の推定は可能であり、不必要な検査も少なくできると考えられる」と結論し、「今後、プロスペクティブな妥当性の確認試験などを行うことで、より高い選択性と正確性で頭痛患者におけるくも膜下出血の有無が推定可能と考えられる」としている。
(菅野守:医学ライター)