心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。
60~80歳の心筋梗塞後患者4,837例に40ヵ月間摂取してもらい追跡
Alpha Omega試験は、オランダ国内32病院で、心筋梗塞後に最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている60~80歳の4,837例(男性78%)を対象に行われた。
被験者は40ヵ月間、次の4つの試験用マーガリンのうちの一つを摂取するよう無作為化された。(1)EPA-DHA配合添加マーガリン(EPA-DHAを1日400mg付加摂取が目標)、(2)ALA添加マーガリン(ALAを1日2g付加摂取が目標)、(3)EPA-DHAとALAが添加されたマーガリン、(4)プラセボマーガリン。
主要エンドポイントは、致死性・非致死性心血管イベントおよび心臓介入から成る主要心血管イベントの発生率であった。データはCox比例ハザードモデルを用いintention-to-treat解析され検討された。
EPA-DHAまたALA摂取でも主要心血管イベント発生は低下せず
被験者が摂取した1日のマーガリン量は平均18.8gだった。(1)~(3)のマーガリンを摂取した群においては、EPAは226mg、DHAは150mg、ALAは1.9gの摂取増加がみられた。
追跡期間中、主要心血管イベントは671例(13.9%)で発生した。EPA-DHA摂取、またALA摂取のいずれによっても、同イベント発生率は低下しなかった。EPA-DHA摂取群のハザード比は1.01(95%信頼区間:0.87~1.17、P=0.93)、ALA摂取群は同0.91(0.78~1.05、P=0.20)であった。
ただ、女性のみを対象としたサブグループ解析の結果では、ALA摂取群で主要心血管イベント発生率の低下が、プラセボまたはEPA-DHA摂取群と比べて、有意に近い関連で認められた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.51~1.03、P=0.07)。
有害事象については、4群間で有意差は認められていない。
(武藤まき:医療ライター)