慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙や空気汚染など複数の因子が重なって起きる慢性進行性の疾患であり、一つの因子への介入では十分な効果が得られない。これまで、早期ステージでの地域ベースの介入にはほとんど関心が示されていなかったが、中国・広州医科大学のYumin Zhou氏らグループが、COPDの早期予防とマネジメントを目的に、地域ベースの統合的介入がもたらす効果を評価するクラスター無作為化比較試験を行った。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年12月1日号)掲載より。
872例を統合的介入群と通常ケア群に割り付け追跡
試験は、2地域8つの保健単位1,062例のうち試験適格・除外基準を満たした40~89歳の872例(COPD患者101例、非COPD患者771例)を、統合的介入プログラム群(介入群)または通常ケアプログラム群(対照群)に割り付け行われた。介入群には、体系的な保健教育、個別の集中的介入と治療、リハビリテーションが行われた。
主要評価項目は、気管支拡張薬投与前の努力呼気1秒量(FEV1)の年低下率とした。
FEV1の年低下率が介入群の方が有意に低い
結果、FEV1の年低下率は、介入群の方が対照群よりも有意に低かった。補正後のFEV1の年低下率の差は19mL/年(95%信頼区間:3~36、P<0.05)であった。予測値、FEV1/FVC(努力肺活量)の年低下率についても同様で、予測値の差は0.9%(同:0.1~1.8、P<0.05)、FEV1/FVCの年低下率の差は0.6%(同:0.1~1.2%、P=0.029)であった。
4年間の追跡調査期間中、介入群は対照群より、禁煙率は高かったが(21%対8%、P<0.004)、全死因累積死亡率は低かった(1%対3%、P<0.009)。またCOPDと喫煙リスク、外気の質、副流煙、労働環境に関する知識も向上していた(すべてのP<0.05)。しかし、2群間のCOPD累積発生率は両群とも約4%で有意差は認められず、COPDに起因する累積死亡率(2%対11%)も有意差は認められなかった。
これらの結果から研究グループは、「地域ベースの統合的介入は、主としてFEV1の年低下率に現われたように、COPDの予防・マネジメントに有意な影響をもたらす可能性がある」と結論している。