低用量アスピリンの服用で懸念される、大腸がん検診の特異度の低下はわずか

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2010/12/21

 



低用量アスピリンを服用している人は、服用していない人に比べ、免疫化学的便潜血検査(iFOBT)による進行性大腸がん検診の感度が約2倍に増大するが、特異度の低下はわずかであったことが明らかにされた。ドイツがん研究センター臨床疫学・エイジング研究部門のHermann Brenner氏らが、約2,000人を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月8日号で発表した。大腸がん検診の対象となる人の中には、心血管疾患予防のために低用量アスピリンを服用している人が少なくないという。しかし低用量アスピリンの服用は、消化管出血の可能性を増大するため、検査に与える影響が懸念されていた。これまで低用量アスピリン服用者と非服用者を対象に、iFOBTのパフォーマンスに関する試験はほとんど行われていなかった。

1,979人に対し2種類のiFOBTで検診




同氏らは、2005~2009年にかけて、ドイツ国内の内科・消化器科の診療所を通じて、合計1,979人を対象に、2種類(Hemoglobin Test、Hemoglobin-Haptoglobin Test)のiFOBTで進行性大腸がん検診を行った。被験者の平均年齢は62.1歳、低用量アスピリンを常に服用していたのは233人(うち男性167人、女性66人)、非服用者は1,746人(うち男性809人、女性937人)だった。

検査の結果、進行性大腸がんが検出されたのは、アスピリン服用者24人(10.3%)、非服用者181人(10.4%)だった。

アスピリン服用者での、感度は有意に高率、特異度はやや低率




iFOBT検査キット製造元の推奨するカットオフ値を用いたところ、進行性大腸がん検出に関する感度は、Hemoglobin Testでは、アスピリン服用者が70.8%(95%信頼区間:48.9~87.4)だったのに対し非服用者が35.9%(同:28.9~43.4)であり、もう一方のHemoglobin-Haptoglobin Testでは、服用者58.3%(同:36.6~77.9)に対し非服用者が32.0(同:25.3~39.4)で、いずれもアスピリン服用者が有意に高率だった(それぞれp=0.001、p=0.01)。

特異度についてみると、アスピリン服用者が85.7%(同:80.2~90.1)に対し非服用者が89.2%(同:87.6~90.7)、もう一方の検査では服用者が85.7%(同:80.2~90.1)に対し非服用者が91.1%(同:89.5~92.4)と、アスピリン服用者がやや低率だった(それぞれp=0.13、p=0.01)。

ROC曲線下面積は、アスピリン服用者が0.79に対し非服用者が0.67(p=0.05)、もう一方の検査では服用者が0.73に対し非服用者が0.65(p=0.17)だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)