大規模試験の結果、テレモニタリングは心不全患者の転帰を改善しないことが明らかにされた。米国エール大学のSarwat I. Chaudhry氏ら研究グループによる。米国では治療の進歩に比して改善がみられない、心不全患者の再入院を減らすための治療戦略開発が国家的優先事項として検討されているという。テレモニタリングは有望な管理戦略とみなされ、その有効性について小規模研究では示されていた。NEJM誌2010年12月9日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載より。
1,653例をテレモニタリング群と通常ケア群に無作為に割り付け追跡
研究グループは、全米33の循環器クリニックで登録された心不全患者のうち、直近30日以内に入院経験のある1,653例を、テレモニタリング群(826例)または通常ケア群(827例)に無作為に割り付け追跡した。
試験で用いられたテレモニタリングは、市販の「Tel-Assurance」という電話の双方向音声応答システムで、患者の症状や体重、うつなどに関するデータを毎日集め主治医がチェックするというもの。具体的には、患者がフリーダイヤルで電話をかけると自動音声の質問が流れ、患者が電話のキーパッドで回答したデータがシステムのサイトに集約され、平日毎日、サイトコーディネーターによってチェックされた。質問にはあらかじめ主治医が注意すべきとしたバリアンスが組み込まれており、バリアンスが発生した場合は患者に連絡がされ、文書も提供された。患者からシステムに2日以上アクセスがないとシステムから呼び出し注意がされ、それでも応答がない場合はシステムスタッフから連絡がされた。アドヒアランスを最大とするため患者には主治医が毎日チェックしていると伝えられ、また緊急事態のリスクを最小化するため、患者には急を要するあらゆる不安を感じた場合はダイレクトに主治医に連絡するよう伝えられていた。
主要エンドポイントは、登録後180日以内の全原因による再入院または全死因死亡とした。副次エンドポイントには心不全による入院、入院日数、入院回数などが含まれた。
患者の年齢中央値は61歳で、42.0%が女性、39.0%が黒人だった。
再入院率、180日死亡率などいずれも有意差は認められず
主要エンドポイントは、テレモニタリング群52.3%、通常ケア群51.5%で、両群の差は0.8ポイント(95%信頼区間:-4.0~5.6、χ二乗検定によるP=0.75)であり、有意差は認められなかった。
全原因による再入院は、テレモニタリング群49.3%、通常ケア群47.4%(両群差:1.9ポイント、95%信頼区間:-3.0~6.7、χ二乗検定によるP=0.45)、死亡については、テレモニタリング群11.1%、通常ケア群11.4%(同:-0.2ポイント、-3.3~2.8、P=0.88)であり、副次エンドポイント、主要エンドポイントやその各項目の発生までの期間について両群間に有意差は認められなかった。有害事象は報告されなかった。
Chaudhry氏は「退院間もない心不全患者へのテレモニタリングが、転帰改善に結びつくことはなかった」と結論したうえで、「この結果は、疾病管理戦略の採用に際しては、あらかじめ徹底かつ独立した評価を行うことが重要であることを示すものでもある」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)