第三世代ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)は、多発性骨髄腫患者において骨関連イベントの予防効果とは別個に全生存の改善をもたらし、骨の健常性の保持にとどまらない抗腫瘍効果を有する可能性があることが、イギリスInstitute of Cancer Research、Royal Marsden NHS Foundation TrustのGareth J Morgan氏らNational Cancer Research Institute Haematological Oncology Clinical Study Groupの検討で示された。ビスホスホネート製剤は、悪性骨病変を有する患者の骨関連イベントのリスクを低減することが確認されており、加えてゾレドロン酸は前臨床試験および臨床試験において、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。
第一世代ビスホスホネート製剤のclodronic酸と比較する無作為化試験
研究グループは、多発性骨髄腫に対する一次治療において、ビスホスホネート製剤が臨床アウトカムに及ぼす効果を評価する無作為化対照比較試験を実施した。
イギリスの120施設から登録された18歳以上の新たに診断された多発性骨髄腫患者が、ゾレドロン酸4mgを3~4週ごとに静注投与する群あるいはclodronic酸1,600mg/日を経口投与する群に無作為に割り付けられた。これらの患者は、さらに強化寛解導入療法あるいは非強化寛解導入療法を施行する群に割り付けられた。
担当医、医療スタッフ、患者には治療割り付け情報は知らされず、ビスホスホネート製剤および維持療法は病勢進行となるまで継続された。
主要評価項目は全生存、無増悪生存、全奏効率とした。全生存と無増悪生存の解析にはCox比例ハザードモデルを用い、全奏効率はロジスティック回帰モデルで解析した。
抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療を
2003年5月~2007年11月までに登録された1,970例のうち1,960例がintention-to-treat解析の適格基準を満たした。ゾレドロン酸群は981例(強化療法群555例、非強化療法群426例)、clodronic酸群は979例(それぞれ556例、423例)であった。
治療カットオフの2009年10月5日の時点で、病勢進行となるまでのビスホスホネート製剤の投与期間中央値は350日[四分位範囲(IQR):137~632日]で、フォローアップ期間中央値は3.7年(IQR:2.9~4.7年)であった。
ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ死亡率が16%[95%信頼区間(CI):4~26%]低下し(ハザード比:0.84、95%CI:0.74~0.96、p=0.0118)、全生存中央値は5.5ヵ月延長した[50.0ヵ月(IQR:21.0ヵ月~未到達) vs. 44.5ヵ月(IQR:16.5ヵ月~未到達)、p=0.04]。
ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ無増悪生存が有意に12%(95%CI:2~20%)改善し(ハザード比:0.88、95%CI:0.80~0.98、p=0.0179)、無増悪生存中央値は2.0ヵ月延長した[19.5ヵ月(IQR:9.0~38.0ヵ月) vs. 17.5ヵ月(IQR:8.5~34.0ヵ月)、p=0.07]。
完全奏効(CR)、最良部分奏効(very good PR)、部分奏効(PR)を合わせた全奏効率は、強化療法施行例[432例(78%) vs. 422例(76%)、p=0.43]および非強化療法施行例[215例(50%) vs. 195例(46%)、p=0.18]ともに、ゾレドロン酸群とclodronic酸群で有意な差は認めなかった。
二つのビスホスホネート製剤はいずれも全般的に良好な忍容性を示し、急性腎不全や治療によって発現した重篤な有害事象の発生率は同等であった。しかし、顎骨壊死の発生率はゾレドロン酸群が4%(35例)と、clodronic酸群の<1%(3例)に比べ多かった。
結果を受け著者は、「新規診断の多発性骨髄腫患者に対しては、骨関連イベントの予防のみならず抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療が支持される」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)