ICD+CRTは死亡・心不全入院率を低下するが有害イベント増加も

提供元:ケアネット

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公開日:2011/01/12

 



植込み型除細動器(ICD)に心臓再同期療法(CRT)を追加した治療を行うと、心不全による死亡および入院の割合が減少したことが示された。ただしこの改善には有害イベントの増加も伴っていた。報告は、カナダ・コロンビア大学のAnthony S.L. Tang氏ら「RAFT」試験グループが、軽症~中等症(NYHA心機能分類IIまたはIII)の心不全でQRS幅が広く(内因性120msec以上またはペーシング200msec以上)左室収縮機能不全を呈する患者1,798例を、平均40ヵ月間追跡した結果によるもので、NEJM誌2010年12月16日号(オンライン版2010年11月14日号)で発表された。CRTは、QRS幅が広く左室収縮機能不全を呈する患者にベネフィットがあることが明らかになっている。そしてそれら患者の大半がICD適応の患者であることから、ICD+CRTと至適薬物療法により死亡・罹患率が低下するかが検討された。

ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長




多施設共同二重盲検無作為化試験のRAFT(Resynchronization–Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial)は、カナダ24施設、ヨーロッパとトルコ8施設、オーストラリア2施設から被験者を募り行われた。

対象は、NYHA心機能分類IIまたはIIIの心不全を有し、左室駆出率30%以下、内因性QRS幅120msec以下もしくはペーシングQRS幅200msec以上の患者で、ICD単独療法かICD+CRT療法(ICD-CRT)のいずれかに無作為に割り付けられた。

主要転帰は、全死因死亡または心不全による入院とした。

被験者は、ICD単独群904例、ICD-CRT群894例の計1,798例で、平均40ヵ月間追跡された。

結果、主要転帰は、ICD-CRT群では33.2%(297/894例)であった一方、ICD単独群は40.3%(364/904例)で、ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長した(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.64~0.87、P<0.001)。

術後30日時点の有害事象、ICD単独群58例、ICD-CRT群124例




死亡は、ICD-CRT群では186例、ICD単独群では236例発生し、ICD-CRT群の方が死亡までの有意な期間延長(相対リスク25%低下)が認められた(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62~0.91、P=0.003)。入院についても、ICD-CRT群174例、ICD単独群236例で、ICD-CRT群の発生割合がより低下した(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.56~0.83、P<0.001)。

しかし一方で、ICD施術後30日時点の有害事象発生が、ICD単独群58例に対してICD-CRT群は124例で認められた(P<0.001)。

(武藤まき:医療ライター)