急性腎障害の予後に、蛋白尿、eGFRは影響するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2011/01/13

 



急性腎障害(acute kidney injury)による入院のリスクは、蛋白尿が重篤なほど、また推定糸球体濾過量(eGFR)が低下するほど上昇することが、カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。eGFRの低値は急性腎障害を示唆し、蛋白尿は腎疾患のマーカーであるが、急性腎障害のリスクの予測におけるeGFRと蛋白尿双方の意義は明確ではなく、急性腎障害や有害な臨床アウトカムには先行する腎疾患は影響しないとの見解もある。さらに、急性腎障害のリスクやアウトカムの評価には蛋白尿やeGFRは寄与しないとする最近の報告もあるという。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年11月22日号)掲載の報告。

eGFR低下と蛋白尿の連携的な影響を評価




研究グループは、eGFRと蛋白尿が急性腎障害やその後の有害な臨床アウトカムに連携的に及ぼす影響を評価するコホート試験を実施した。

対象は、2002~2007年にカナダ・アルバータ州に居住した92万985人であり、ベースライン時に透析を受けておらず、血清クレアチニン値または蛋白尿(試験紙あるいはアルブミン-クレアチニン比で判定)のいずれかを外来で1回以上測定された者とした。

主要評価項目は、急性腎障害による入院率とし、全死亡、腎臓関連の複合アウトカム(末期腎疾患、血清クレアチニン値倍加)の評価も行った。

急性腎障害は、より長期的な予後情報をもたらす




追跡期間中央値35ヵ月(範囲:0~59ヵ月)の時点で、6,520例(0.7%)が急性腎障害で入院した。

eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合の急性腎障害による入院のリスクは、試験紙検査で高度と判定された蛋白尿の4倍以上に達した(蛋白尿がみられない場合とのリスク比:4.4、95%信頼区間:3.7~5.2)。

試験紙検査で高度蛋白尿の場合、eGFR値にかかわらず、急性腎障害および透析を要する腎障害による入院のリスクが上昇した。

急性腎障害で入院した患者では、死亡および腎関連の複合アウトカムのリスクも高かったが、ベースライン時にeGFR低値および高度蛋白尿がみられた場合はこのリスクの上昇が抑制されていた。

著者は、「急性腎障害による入院のリスクは蛋白尿の重篤化やeGFRの低下に伴って上昇した。eGFR低下や蛋白尿がみられる場合は、その程度にかかわらず、長期的な死亡率は急性腎障害発症後に上昇した。臨床的に問題となる腎機能の低下は急性腎障害によって増加するが、ベースラインのeGFRが最低値の場合や蛋白尿が最高度な例では影響はなかった」とまとめ、「これらの知見は、急性腎障害のリスクが確認された場合にはeGFRおよび蛋白尿を考慮すべきであり、急性腎障害の存在はeGFRや蛋白尿に加え、さらに長期にわたる予後情報をもたらすことを示唆する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)