うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。
ともに働く看護師とガイドラインに即し、リスク因子のコントロール達成を目指す
試験は、ワシントン州の統合医療システムに参画する14の診療所で行われた。被験者は2007年5月~2009年10月の間に募集された214例で、糖尿病のコントロール不良、冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方を有し、かつうつ病を有しており、通常ケアを受ける群か介入群かに無作為に割り付けられ、追跡された。
介入群には、各患者のかかりつけ医とともに働き医学的指導を受けた看護師が、疾病ガイドラインに即して、複数疾患のリスク因子のコントロールを目標に協同的なケアマネジメントを提供した。
主要転帰は、12ヵ月時点での患者のリスク因子の目標達成の割合で、糖化ヘモグロビン、LDL-C、収縮期血圧、SCL-20尺度によるうつ病転帰を同時モデル化し、単一全般的な治療効果の評価が行われた。
介入群の方が改善度は大きく、患者QOL・満足度も高い
結果、通常ケア群との比較で介入群は、12ヵ月時点の全般的改善度が大きかった。糖化ヘモグロビン値の通常ケア群とのコントロールの差は0.58%、LDL-Cは同6.9mg/dL、収縮期血圧は5.1mmHg、SCL-20スコア差は0.40ポイントであった(いずれもP<0.001)。
また、介入群の患者は、インスリン(P=0.006)、降圧薬(P<0.001)、抗うつ薬(P<0.001)の調整を1回以上行われることが多く、良好なQOL(P<0.001)、糖尿病と冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方のケアに対する満足度が高く(P<0.001)、うつ病のケアに対する満足度も高かった(P<0.001)。
(武藤まき:医療ライター)