急性中耳炎児への抗菌薬治療の有効性については、なお議論が続いている。フィンランド・トゥルク大学病院小児科部門のPaula A. Tahtinen氏らは、二重盲検無作為化試験の結果、3歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)投与は、プラセボと比べて有害事象は多いがベネフィットがあると報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。
8日間の治療失敗62%低下、レスキュー治療の必要性81%低下
試験は二重盲検無作為化試験で、(1)耳鏡検査で中耳滲出液が認められ隆起や可動性の喪失・制限など二つ以上の鼓膜所見があり、(2)鼓膜に紅斑など一つ以上の急性炎症性徴候が認められ、(3)発熱、耳痛など小児が急性症状を呈する、といった厳密な基準で急性中耳炎と診断された生後6~35ヵ月児319例を対象とした。
被験児は、無作為に、7日間アモキシシリン-クラブラン酸を投与される群(161例)もしくはプラセボ投与群(158例)に割り付けられ、治療開始から終了までの8日間における治療失敗までの期間を主要転帰に評価が行われた。治療失敗の定義は、有害事象を含む小児の病態全般と耳鏡検査下での急性中耳炎の徴候とした。
結果、治療失敗は、アモキシシリン-クラブラン酸投与群は18.6%であったが、プラセボ群は44.9%に認められた(P<0.001)。群間差は、初回予定受診日であった治療開始後3日時点ですでに認められ、この時点でアモキシシリン-クラブラン酸投与群13.7%に対し、プラセボ群は25.3%であった。
全体的に、アモキシシリン-クラブラン酸により治療失敗は62%低下し(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.25~0.59、P<0.001)、レスキュー治療の必要性は81%低下した(6.8%対33.5%、ハザード比:0.19、95%信頼区間:0.10~0.36、P<0.001)。
鎮痛薬または解熱薬が投与されたのは、アモキシシリン-クラブラン酸群84.2%、プラセボ群85.9%であった。
さらにベネフィットを最大限にもたらす患者特定の試験を
有害事象は、プラセボ群よりもアモキシシリン-クラブラン酸群で有意に多く認められた(P=0.003)。下痢が、アモキシシリン-クラブラン酸群で47.8%に認められたが、プラセボ群では26.6%であった(P<0.001)。湿疹は、それぞれ8.7%、3.2%であった(P=0.04)。
これら結果を受けてTahtinen氏は、「急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸は、プラセボと比べて有害事象が多いがベネフィットをもたらす」と結論。抗菌薬治療は、全般的な病態と耳鏡下での徴候を改善することによって治療失敗のリスクを低下すると述べ、「さらなる試験で、不要な抗菌薬治療や耐性菌の出現を最小とする一方でベネフィットを最大限にもたらす患者を特定しなければならない」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)