血漿中のβアミロイド42/40濃度が低い人は、高い人に比べ、認知機能の低下が促進することが明らかにされた。その傾向は、認知的予備力の低い人ほど強いことも示された。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科部門のKristine Yaffe氏らが、地域在住の高齢者997人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。βアミロイド42/40濃度と認知症発症との関連は知られているが、否定的な報告もあり、また認知症ではない高齢者における検討はほとんどされていなかった。
βアミロイドβアミロイド42、42/40濃度と3MSスコアとの関連を検討
Yaffe氏らは、1997~1998年に地域在住の高齢者997人について試験を開始し、2006~2007年まで10年間前向きに追跡した。被験者はメンフィス、テネシー、ピッツバーク(ペンシルベニア州)に住む70~79歳の黒人および白人の高齢者で「Health ABC Study」の登録者だった。試験開始時点の被験者の平均年齢は74.0歳、うち女性は550人(55.2%)だった。
試験開始後、初回の追跡調査時点(中央値:53.4週後)で採血し保存していたサンプルを用い、血漿中のβアミロイド42とβアミロイド42/40を測定した。試験開始後1年、3年、5年、8年、10年の時点で、改定ミニメンタルステート検査(3MS)を行い認知能力の低下について分析した。
βアミロイド42/40濃度の最低三分位範囲で、3MSスコア低下幅が有意に増大
結果、βアミロイド42/40濃度が最も高い三分位範囲の群では、9年間の3MSスコアの低下幅は-3.60ポイント(95%信頼区間:-2.27~-4.73)だったのに対し、同濃度の最も低い三分位範囲の群では、同低下幅は-6.59ポイント(同:-5.21~-7.67)、中間の三分位範囲の群では-6.16ポイント(同:-4.92~-7.32)と、有意な関連が認められた(p<0.001)。この関連は、年齢や人種、教育程度、糖尿病、喫煙、アポリポ蛋白Ee4の有無で補正し、認知症の認められた72人を除いた後も、変わらなかった。
しかし関連は、高校卒業者、6年制卒以上の教養がある、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子がない、といった認知的予備力の高い群では弱まった。たとえば、高校を卒業していない人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-4.45ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-8.94ポイントだったが、一方で高校卒業以上の学歴のある人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-2.88ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-4.60ポイントで格差はより小さかった(相互作用p=0.004)。教養の有無(p=0.005)、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子の有無(p=0.02)でも同様の関連が認められた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)